2025 春号 Vol.131
営農レポート
低圧細霧冷房システムについて
近年、農業生産現場では夏場の高温が大きな課題となっています。今回は、高温対策の一つの事例として、低圧細霧冷房システム(一般的な水道の圧力で作動するシステム)を使用した花苗栽培の事例についてご紹介します。
1 低圧細霧冷房システムの設置概要
東村山市の花苗生産者圃場の鉄骨ハウス(348㎡)に、外径16㎜のポリエチレンパイプをハウス内地上高2.5mに配管し、コントローラー(IDEC製:スマートリレー)でミストを制御する装置を設置しました(図1)。
日の出から日の入りの間に、ハウス内の気温が外気温より2℃以上高くなった時と、ハウス内温度が30℃を上回った場合にミストを5秒噴霧、2分停止を繰り返すように設定しました。ミストノズルの1個当たりの散水量は125ml/分でした。

2 結果
ミストを設置したハウスと使用しなかった同規格の鉄骨ハウスの気温変化は図2の通りです。日中の気温はミストを設置したハウスで低く、最大で3.4℃低下しました。湿度はミストを設置したハウスで10%程度高く推移しましたが、湿度上昇による病害の発生は見られませんでした。また、ミストにより葉の表面が濡れることもありましたが、障害の発生は見られませんでした。なお、ミスト導入により、例年より開花が早まり、早期出荷が可能でした。

3 設置に関するコストについて
低圧細霧冷房システムの資材価格は、施設面積3.5aで、合計約22万円でした(表)。本事例ではミスト噴霧に必要な水圧を確保できなかったため、ポンプを使用していますが、水圧が十分確保できる施設であれば、より低コスト化できると考えられます。

4 まとめ
本事例の場合、個人で設置することが可能で、現在普及しているドライミストを用いた細霧冷房システムより安価に導入することができました。ハウス内の高温化対策を行うことは、作物の生育が改善するだけでなく、作業者の負担も軽減することができます。ぜひ参考にしてください。