2024 新春号 Vol.126
税務・法律・年金相談
インボイス制度の経過措置について
令和5年10月1日よりインボイス制度(適格請求書等保存方式)が始まりました。ただし、激変緩和措置として、一定期間の経過措置が設けられており、個人事業主の方を対象とした主な措置は以下のとおりです。
1.免税事業者等からの仕入れに係る経過措置
インボイス制度の下では、インボイス発行事業者以外の者(消費者、免税事業者又は登録を受けていない課税事業者)からの課税仕入れについては、仕入税額控除のために保存が必要な請求書等の交付を受けることができないことから、仕入税額控除を行うことができません。
ただし、インボイス制度開始から一定期間は、インボイス発行事業者以外の者からの課税仕入れであっても、仕入税額相当額の一定割合を仕入税額とみなして控除できる経過措置が設けられています。
経過措置を適用できる期間と控除額は、次のとおりです。
仕入税額相当額の80%
仕入税額相当額の50%
なお、この経過措置の適用を受けるためには、一定事項が記載された帳簿及び請求書等の保存が要件となります。
2.小規模事業者に係る税額控除に関する経過措置(2割特例)
インボイス制度を機に免税事業者からインボイス発行事業者として課税事業者になられた方については、仕入税額控除の金額を、特別控除税額(売上税額の8割)とすることができます(いわゆる2割特例)。
売上に係る消費税額から「売上税額の8割」を差し引いて納税額を計算
2割特例の適用対象者は、インボイス制度を機に免税事業者からインボイス発行事業者として課税事業者になった者等が対象となります。したがって、インボイス発行事業者の登録を受けていない場合や、基準期間(前々年)における課税売上高が1千万円を超える場合等も2割特例の対象となりません。2割特例の適用を受けるための条件に該当するか否か、必ず専門家に相談しましょう。
また、2割特例を適⽤できる期間は、免税事業者が令和5年10月1日から登録を受けた場合には、令和5年分(10~12月分のみ)の申告から令和8年分の申告までの計4回の申告が適用対象となります。2割特例の適用に当たっては、簡易課税制度のような事前の届出は必要なく、消費税の確定申告書に2割特例の適用を受ける旨を付記することで適用を受けることができます。
3.⼀定規模以下の事業者に対する事務負担の軽減措置(少額特例)
少額(税込1万円未満)の課税仕入れについて、インボイスの保存がなくとも一定の事項を記載した帳簿の保存のみで仕入税額控除ができます。これは取引先がインボイス発行事業者であるかどうかは関係なく、免税事業者であっても同様です。適用対象者は基準期間における課税売上高が1億円以下又は特定期間(※)における課税売上高が5千万円以下の事業者です。
※「特定期間」とは、個人事業者については前年1月から6月までの期間をいいます。
少額特例は、令和5年10⽉1⽇から令和11年9⽉30⽇までの期間が適⽤対象期間となり、その間に行う課税仕⼊れが適用対象となります。少額特例は、「税込」1万円未満の課税仕入れが適用対象になります。少額特例の判定単位は、課税仕入れに係る1商品ごとの金額により判定するのではなく、⼀回の取引の合計額が1万円未満であるかどうかにより判定することとなります。従いまして、例えば、9,000円の商品と8,000円の商品を同時に購⼊した場合(合計17,000円)、少額特例の対象になりません。