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2024 新春号 Vol.126

営農レポート

都内で栽培できる熱帯果樹 ~パッションフルーツなど~

2023年(令和5年)夏季は、都心部で25℃以上の夏日が140日を超すなど、暑い日が続きました。また、今年に限らず、このところずっと夏が暑い年が多くなっています。気象庁の過去の気象データから日最高気温、日最低気温について比べると1993年から10年ごとの観測値は2023年までだんだん上昇しています(下記グラフ)。
そのため、農家の皆様から、瀬戸内や九州、沖縄などで栽培されている熱帯や亜熱帯原産の果樹栽培に関する問い合わせも多くなっています。そこで、今回はそれらの果樹類の栽培について紹介したいと思います。

パッションフルーツ

東京都の島しょ部(伊豆、小笠原諸島)は温暖な気候を活かした果樹、花き、野菜栽培が古くから行われていました。現在、栽培されているパッションフルーツの交配種は、昭和50年代に八丈島で盛んに生産されるようになり、そこから小笠原へ導入され、栽培が広まりました。その後、南多摩地域でも栽培が始まり、いまは生産組織で果実の生産販売するほか、JAや商工会などと連携して、果汁ドリンク等の製品が道の駅や量販店の地元産コーナーなどで販売されています。
都内で露地栽培する場合は、春先に霜の心配がなくなったころ、草丈1~2m程度の大苗を定植します。育苗した鉢の底を抜き、鉢のまま植えることで雨やかん水により株元に泥跳ねして病気(立ち枯れ病等)に感染することを予防します。
施肥は産地により様々なやり方がありますが、目安として定植前の元肥に緩効性肥料(10-10-10)を株当り100g程度与えます。着花が見られた頃、追肥(硫安など)を50g/株与え、その後は一ヶ月ごとに追肥します。生育伸長と開花、果実肥大が同時に進行するため、肥料・水が不足して葉が小さくならないように注意して管理します。10aあたり必要な窒素成分量の目安は、生長期6kg、開花盛期6kg、果実肥大期8kg程度となります。
仕立て方法はブドウ棚のようにする方法もありますが、キュウリネット等を利用して、垣根状に仕立てる方法が蔓の誘引や受粉、収穫など作業がしやすいと思われます。
訪花昆虫により受粉しますが、より確実な受粉と果実肥大を求めるには、開花したおしべから葯(花粉)を採り、人工的にめしべに受粉させます。果実肥大、収穫は温度や日照等の状況にもよりますが、受粉後60日程度で緑の果実が赤紫~濃紫色になり、離層ができて落果するころに収穫します。できるだけ綱袋などを掛け、その中で受け止めて、果実が地面に落ちないようにして収穫します。地面に当たる衝撃で果実内の品質を損ねます。成りはじめの果実は100gを超える程度に肥大します。その後に着果、収穫するものは徐々に小さくなります。11月、気温が低下してくると萎れて枯れます。保温、加温できる施設などでは冬を越して、数年継続して栽培することも可能です。
定植苗は大苗を購入する他、自身で育苗する場合は、夏~秋に葉を1~2枚付けた茎を用意して、挿し木をします。発根したらポットに植え替え、蔓の伸長に合わせてより大きい鉢に移植します、気温低下する冬季は野菜育苗ハウス等で温度を保ち、春まで育て定植します。都内では野菜と同じような感覚で1年ごとの栽培とする方法が簡便です。

画像1 着果の状況
画像2 果実の内部(可食部位)

マンゴー

主に気候の適している小笠原諸島などで生産され贈答用などに販売されています。また、国内の主産地(鹿児島や沖縄、宮崎)の他、近年は茨城県など関東地域で生産される事例が知られており、都内農業者からも生産に関する問い合わせが寄せられています。
永年性樹木となるマンゴーは、関東以北で生産するには、施設で栽培することが適しています。また、直接に地面へ植えるよりも購入した苗を大鉢に植えて、ベンチ上でコンパクトに栽培する方法が取扱いやすいと考えます。苗を購入・栽培して、剪定管理でコンパクトに仕立て、3年目頃から結実が期待できます。鉢の給水はかん水チューブを使う方法で労力を軽減できます。化成肥料や液肥を利用して施肥を行います。1株当たりの窒素成分施肥量は、1年目7kg(4、6、8、9月)、2年目8kg(4、6、8月)施用します。3年目10kg、4年目15kg、5年目20kg(花芽分化後の1~2月、果実肥大期の4~5月、収穫後の7~8月)を施用します。6年目以降は5年目と同様に施肥管理します。5年目以降の目標となる収量は2t/10aとなります。炭疽病や軸腐れ病、かいよう病、ハダニ類などの被害が出ます。良品生産の為には農薬散布など防除を適切に行う必要があります。

画像3 マンゴー着果状況

その他

香酸カンキツやミカン類、青パパイヤ(野菜利用)なども都内で栽培される事例があります。温暖化の傾向が進む中、熱帯性果樹栽培に取り組んでみたい方は、JAや中央農業改良普及センターにご相談ください。

画像4 青パパイヤ