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2023 秋号 Vol.125

税務・法律・年金相談

遺留分と特別受益

〔質問〕

私には長男と次男がいますが、妻は何年も前に他界しています。長男には独立するときに生活の資金として1000万円を贈与(特別受益)しています。私が自分の財産(全部で8000万円位)全部を次男に相続させるという遺言書を書いても長男には遺留分があると思いますが、そのときに特別受益として計算される金額は相続開始10年以内に限ることになったというのはそのとおりなのでしょうか。

〔回答〕
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結論を言いますと、特別受益は遺留分算定の基礎となる財産の額算定のときには相続開始10年以内に限りますが、遺留分侵害請求をする人(長男)が自分の遺留分額を具体的に算定するときには相続開始10年よりも前の特別受益も控除されるということになります。

2

遺留分に関する法制も令和元年7月1日から変更されています。すなわち、民法第1044条第1項は「贈与は、相続開始前の1年間にしたものに限り、前条の規定によりその価額を算入する。当事者双方が遺留分権利者に損害を加えることを知って贈与したときは、1年前の日より前にしたものについても、同様とする。」と規定し、同条第3項においては、「相続人に対する贈与についての第1項の規定の適用については、同項中「1年」とあるのは「10年」とする。」と規定しています。つまり、遺留分算定の基礎となる財産の額算定のときには、相続人に対するものは相続開始の10年以内にしたものに限り算入するということです。それをふまえたうえで、民法第1046条第2項は、「遺留分侵害額は、第1042条の規定による遺留分から第一号及び第二号に掲げる額を控除し、これに第三号に掲げる額を加算して算定する。

一 遺留分権利者が受けた遺贈又は第903条第1項に規定する贈与の価額

二 第900条から第902条まで、第903条及び第904条の規定により算定した相続分に応じて遺留分権利者が取得すべき遺産の価額

三 被相続人が相続開始の時において有した債務のうち、第899条の規定により遺留分権利者が承継する債務(次条第3項において「遺留分権利者承継債務」という。)の額」

旨規定して遺留分の具体的金額の算定方法を定めています。そして、民法第903条第1項に規定する贈与については相続の開始の10年以内という期間の限定はありませんので、長男に対する特別受益は、遺留分侵害額請求の際の遺留分額の算定のときには控除されることとなります。

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質問の事例でいいますと、長男が遺留分を請求する場合の具体的な遺留分侵害額は次のとおりとなります。

(1) 長男に対する特別受益が相続開始10年以内である場合
8000万円(遺産)+1000万円(長男の特別受益)=9000万円(遺産分算定の基礎となる財産の額)
9000万円×4分の1(遺留分割合)=2250万-1000万円(長男が受けた特別受益)=1250万円

(2) 長男に対する特別受益が相続開始10年より前であった場合
8000万円(遺産分算定の基礎となる財産の額)8000万円×4分の1(遺留分割合)=2000万-1000万(長男が受けた特別受益)=1000万円

(3) このように、特別受益については、10年より前か後かということにより、遺留分算定の基礎となる財産の額の算定に際して、算入しなかったり、算入したりということになるわけですが、遺留分請求権者が、その特別受益を受けた者である場合に、具体的な遺留分侵害額の算定にあたっては、相続開始の10年以内という時間的な制約はなく控除することになります。

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法律は、遺言者の意思を尊重して、早くもらった人が得をするという不公平をさけるためにこのようになっています。