2023 秋号 Vol.125
営農豆知識
庭木などに発生するカイガラムシについて
カイガラムシは樹木の葉や枝に付着して汁を吸うため、多発すると衰弱し枯れてしまいます。また排泄物で葉にすす状のカビを発生させる種類も多く、葉が黒く汚くなってから初めて被害に気が付くことになります。固いカラやロウ物質におおわれるので、防除がむずかしい害虫です。
果樹や茶園では重要害虫になっている種類も多いですが、今回は庭木などに寄生するカイガラムシの特徴と防除についてご紹介します。
カイガラムシとは
カイガラムシは、昆虫の半翅目に分類され、セミ、アブラムシ、カメムシ、コナジラミなどと同じ仲間です。針のような口を枝に差込み、樹液を吸います。
種類は非常に多く、1000種近いともいわれていますが、樹木に寄生する主なカイガラムシとして、東京都の資料では30種類程度が記載されています。
主なカイガラムシの特徴
種類によって、大きさ、形、色など多様で、ロウ物質でおおわれているもの、白い粉をふくもの、堅いカイガラのあるもの、袋に入っているものなど様々です。
生態も種類によって様々で、年間の幼虫発生回数は、種類により1~3回のものがあります。
表1にルビーロウカイガラムシの特徴を、表2にいくつかの種類を簡単にまとめてみました。
表1 ルビーロウカイガラムシの特徴
- 形態:メス成虫はあずき色でかたく、大きさは3~4mm
- 発生:年1回
- メス:卵⇒幼虫(3齢)⇒成虫
- オス:卵 ⇒幼虫(2齢)⇒蛹⇒成虫(有翅1対)
オス成虫は羽が2枚で飛翔が可能で、メスと交尾後に死亡 - 越冬:受精したメス成虫で越冬
- 産卵:最盛期は7月上旬、カイガラの下に約1000粒産卵する
- 幼虫:ふ化後、2日間くらい移動して定着、4~5日でロウ物質を分泌する
- 加害作物:かんきつ類、ナシ、チャ、ツバキ、マサキ他 多数
- 被害:小枝や葉から樹液を吸収し、すす病を誘発する
- 発生時期:成虫~9月中下旬~6月中旬
幼虫~6月中下旬~7月上旬
表2 主なカイガラムシの特徴
※幼虫発生時期は天候等によって前後する場合があります。
種類 | 加害植物 | 幼虫発生時期の目安(防除時期) | すす病併発 |
イセリアカイガラムシ | ナンテン、ミカンなど | 6月、8月 | 有 |
ウメシロカイガラムシ | バラ、サクラ、ウメなど | 5月中旬、7月中旬、8月下旬 | 無 |
サルスベリフクロカイガラムシ | サルスベリ、ザクロなど | 6月、8月 | 有 |
タマカタカイガラムシ | ウメ、サクラ、ボケ、カナメモチなど | 5月下旬~6月中旬 | 無 |
ミカンヒメコナカイガラムシ | ユリ、ツツジ、ミカン、観葉植物など | 6月中下旬、8月中下旬 | 有 |
ルビーロウカイガラムシ | ツバキ、マサキ、かんきつ類、チャなど | 6月中旬~7月上旬 | 有 |
防除方法
適度な剪定と施肥をする
枝葉が混み合うと発生しやすくなるので、適度な剪定を行います。樹勢の弱った樹、特に繁りすぎて風通しと日当たりの悪くなった枝や幹によくつきます。発生の多い枝は切り取ります。また、肥料を与えて樹勢を強めれば防除効果も高まります。
こすり落とす
小さな庭木などで少発生の場合はこまめにこすり落とします。道具は軍手、歯ブラシ、たわし、竹べら、木片などを使うとよいでしょう。
マシン油による冬期防除
夏~秋に発生が多かった樹は、12月から1月ころの新芽が動き出す発芽前に、マシン油乳剤などを散布します。成虫を窒息させる効果があります。
生育期の防除
成虫は体の表面がロウ物質で被われているので、農薬を散布しても効果がありません。卵からふ化した直後の幼虫の発生時期が防除適期になります。
幼虫はカイガラの中で卵からふ化し、はい出してきます。2日間くらい移動した後に定着し、4~5日でロウ物質の分泌が始まります。防除は幼虫の発生がほぼ終了し発育が進んでいないこの時期をねらって薬剤散布をします。だらだらと発生することもあり、7~10日おきに2~3回散布が効果的です。肉眼で幼虫発生を確認することは難しいですが、表2の発生時期の目安と表3の登録農薬を参考にして防除対策をご検討ください。
表3 樹木類のカイガラムシに登録のある主な農薬
※ウメやミカンは樹木類には入りません
農薬名 | 有効成分 | 希釈倍数 | 使用時期 | 使用回数 | 防除時期 |
アタックオイル | マシン油97% | 1000倍 | - | - | 冬期 |
カルホス乳剤 | 有機リン剤 | 1000倍 | 発生初期 | 6回 | 生育期 |
マツグリーン液剤2 | ネオニコチノイド | 250倍 | 発生初期 | 5回 | 生育期 |
アプロードフロアブル | 脱皮阻害剤 | 1000倍 | - | 6回 | 生育期 |