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2023 夏号 Vol.124

営農レポート

コマツナ白さび病の耐病性品種の比較検討

コマツナは栄養価が非常に高く、カルシウムはホウレンソウの3倍以上、ビタミンCやカロテンも豊富に含んでいる野菜です。中央卸売市場における東京産コマツナの取扱量は第4位・571トン(令和4年東京都中央卸売市場統計)あり、都内で多く生産されている品目です。
白さび病はコマツナの重要病害であり、梅雨期や秋雨期に露地栽培で多発します。一度発生すると好適な気象条件下ではすぐにまん延してしまうため、薬剤による防除が難しく、激発すると畑全体で収穫・出荷が困難になってしまいます。
中央農業改良普及センターは、白さび病に対して強い(耐病性が高い)とされる品種を管内生産者圃場で7種類(地域の慣行品種として「菜々音」)比較栽培しました。それらの耐病性と形状などを調査し、その結果を以下にまとめました。

栽培期間中に発生した白さび病

白さび病耐病性品種について

コマツナ白さび病に耐病性をもつ品種は、各種苗会社が販売しています。その中から本病が問題とされる時期に栽培できる品種を選択しました。(表1)

表1 供試品種と品種の特性

品種名
(種苗会社)
品種の特性(参照:種苗会社のカタログ)
耐病性 生育 草姿
さくらぎ
(サカタのタネ)
萎黄病、白さび病に耐病性がある 中早生 極立性
はっけい
(サカタのタネ)
春、秋作で問題となる白さび病に強い 中生 極立性
美翠(みすい)
(渡辺農事)
白さび病に耐病性がある 中生 極立性
のりちゃん
(雪印種苗)
白さび病、べと病に強く、株張りの良く収量が多い 中生 極立性
夏の甲子園
(トキタ種苗)
白さび病に強い耐病性がある 晩生 (不明)
神楽坂(かぐらざか)
(日本農林社)
白さび病には当社「江戸の小町」より強い (不明) 極立性
菜々音(ななね)
(タキイ種苗)
(慣行品種)
白さび病、萎黄病に対して強い耐病性がある
中生 極立性

品種の比較栽培試験の結果

露地で令和4年9月下旬から10月上旬にかけて播種し、その後不織布資材をべたがけして栽培しました。白さび病は11月8日から発生が確認されました。地域の慣行品種である「菜々音」は比較的多くの株に発病が見られました。「さくらぎ」、「美翠」、「神楽坂」は「菜々音」と同等程度の発病が見られました。「はっけい」、「のりちゃん」、「夏の甲子園」は発生が確認されませんでした。これらの品種の収穫時の様子は写真1の通りです。
形状などの調査結果としては、葉長、葉身長及び葉身幅はすべて「夏の甲子園」が最大でした。展開葉の数は「のりちゃん」が「菜々音」の次に多く、地上部の重さは、「はっけい」が「菜々音」と同程度でした(表2)。

表2 白さび病の発生と各品種の形状特性

品種名 白さび病
耐病性※
葉長
(cm)
葉身長
(cm)
葉身幅
(cm)
展開葉数
(枚)
地上部重
(g/株)
さくらぎ 32.9 19.2 9.8 4.6 52.1
はっけい 34.3 18.0 10.7 5.7 69.1
美翠 30.6 17.7 10.0 5.4 57.3
のりちゃん 30.8 15.2 9.5 5.8 52.4
夏の甲子園 35.0 20.0 11.3 5.3 61.8
神楽坂 32.7 17.4 10.5 4.9 59.5
菜々音 33.2 18.1 8.9 7.5 70.0

※発病が確認されなかった品種を◎で表した

はっけい
のりちゃん
夏の甲子園
菜々音(慣行品種)
写真1 収穫調査(令和4年11月17日)時の形状

まとめ

コマツナ白さび病の発病が見られなかった品種は、「はっけい」、「のりちゃん」、「夏の甲子園」でした。これらの品種は今回供試した品種の中では、強い耐病性があるということが示唆されました。
本病は一度発生した圃場では、毎年発生することが多くなります。今回の結果を参考に導入品種をご検討ください。
また、耐病性を持つ品種でも、圃場の環境条件や病原菌の密度が高いと発病してしまうため、注意が必要です。予防的な防除を心がけ、収穫後の残渣は放置せずに穴を掘って埋設するなど、丁寧に処分して圃場衛生管理に努めましょう。
何かご不明なことがあれば、お近くのJAや中央農業改良普及センターにご相談ください。