2023 春号 Vol.123
税務・法律・年金相談
インボイスとはなに??
◎インボイスを知る前に消費税のおさらいをしましょう。
1.消費税のめざすこと
消費税は、消費全体に広く公平に負担を求める税です。このために事業主が消費者から預かった税金を国に治めるための仕組みです。事業主(イオンやトヨタなど)は消費者から預かった税金から商品を仕入れたりするのに支払う税金を差し引いた金額を国庫に納めます。複雑な計算と大量のデータを処理することになりますが、事業者の手元には全く消費税は残らないのです。
インボイス制度の導入でも消費者には何らの影響はなく事業者の納税の計算方法が変わるだけです。
現在のところ、日本では国庫への納付計算は帳簿上の処理で行われていますがイギリス、ドイツなどの国ではインボイスによる裏付のある資料による税額控除が一般的です。
2.消費税納付の仕組み
インボイス制度導入は、この商品を仕入れたときに支払う税金(仕入税額控除)の計算方式の変更なのです。インボイス制度の下で発行される請求書・領収書類には「13桁の登録番号、取引年月日、内容品目、適用税率、消費税額、書類発行者の名称、氏名」が記載されたものでないと事業者が支払う税金として控除できなくなります。
この控除計算を仕入税額控除といいます。仕入税額控除は生産・流通などの各取引段階で幾重にもわたり税金のかからないように課税売上に対する消費税額から課税仕入れに対する消費税を控除して税が累積しない仕組みです。
◎さて、インボイスとは何でしょうか
1. インボイスとは英語でinvoiceのことで商品の送り状や請求書の意味になります。
10月から実施されるインボイス制度では、普段利用するスーパーでの買い物で受領するレシートや領収書には、商品の本体価格と税率10%ないし8%の消費税額が表示されてその合計額が記載されます。さらに適格登録事業者であることを示す登録番号や事業者の欄もあります。
例えば、建物の工事を依頼した時に工事会社から提出される見積書、請求書についても本体価格と税率、税額が記入されて相手先の住所、名称に登録事業者番号が記載されていればインボイスとなります。
そして事業者が、店舗の賃借時に建物オーナーとかわす賃貸契約は2年や5年の長期契約になりますが、その契約時に家賃の額と税率、税額が記載され賃貸人の登録番号などが記載されていれば契約書がインボイスです。
ただ、アパートやマンションの賃貸契約の家賃は非課税ですから今までと変わりません。
2. 事業者にはインボイスの保管が必要になる
現在のところ、その計算は帳簿上の処理で行われていますが、インボイス制度が導入されると支払消費税額を個々のインボイスをもとに把握することになりますので、自ら発行したインボイス(預かり消費税)とともに保管が必要になり事業者の事務作業の負担が増加することになります。
3.登録しない事業者はどうするのか?
課税売上高が1,000万円以下の事業者は消費税の納付が免除されています。この事業者を免税事業者といい小規模な建設請負業者、飲食店や個人事業者が該当します。
インボイス制度のもとでは得意先の会社や賃貸先から仕入税額控除のために登録番号のあるインボイスが要求されることがあります。この場合の対応策は3つです。
a.課税事業者となり消費税を申告納税する。
b.現状のままとする。しかし仕事が減少するリスクがあります。
c.請求書に消費税を計上しないで値引きを甘受して請求する。
ただ、売上先が一般消費者だけで特に課税事業者がいない事業者は、免税事業者はもちろん課税事業者であっても登録番号申請は必要ないでしょう。