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2023 春号 Vol.123

営農レポート

ホウレンソウのべと病、アザミウマ類についての調査結果報告

普及センターでは、令和3~4年度の2年間、軟弱野菜(ホウレンソウ、コマツナ)の防除技術を見直すため、作型及び病害虫発生状況について、生産者(56人)への聞き取り調査を行いました。今回は調査結果の中から、ホウレンソウのべと病、アザミウマに関連した内容をお伝えします。

1.ホウレンソウのべと病について

●べと病の被害

最初は葉の表に不明瞭な薄黄色の斑点が現れ、症状が進むと緑黄色の病斑になり、葉裏には灰色の胞子が見えます(写真1)。発生適温は20℃前後で、ホウレンソウの生育適温と重なり、高湿度条件で多発します。また、病原性の異なる「レース」があり、品種によって抵抗性レースが異なります。
対策としては、最新レースに対応した抵抗性品種を使用する、適切な薬剤散布を行うことが重要です。今回の調査では、実際に使用されている品種、薬剤の状況がわかりました。

写真1 ホウレンソウべと病

●品種、使用薬剤の調査結果(令和3年4月~令和4年12月)

品種については、様々な品種が使われていました。令和3年度に多発したべと病は、レース10、17~19(もしくはそれ以上の新規レース)と言われていますが、レース17以上の抵抗性を持つ品種の使用は多くありませんでした(表)。今後品種の特性を把握し、新しい品種へ切り替えていく必要があります。
農薬については、播種前に使用できるユニフォーム粒剤を使用している生産者は2割以下と少なく、散布剤はランマンFLが突出して多い結果でした(図1)。1月~3月の露地栽培では、散布剤の使用は労力がかかるため、播種前に使用できる薬剤を効果的につかっていく必要があります。また、ランマンFLとライメイFL、フェスティバル水和剤とレーバスFL のように、作用機構が同じ薬剤の連続使用は、抵抗性が発達しやすくなります。抵抗性の発達しにくい薬剤防除方法を検討する必要があります。

表 使用品種と抵抗性レース
図1 使用農薬一覧

2.ホウレンソウのアザミウマ類について

●アザミウマ類の被害

アザミウマ類は体長1~2mm 程度の微小害虫で、新葉を吸汁加害し、葉に萎縮や傷を生じさせるため、被害株は品質が低下します(写真2)。主に春~夏にかけて多発しますが、秋にも再発生し、被害をもたらします。
微小害虫で世代交代も早いため、薬剤散布だけで防除を行うことが難しい害虫です。防虫ネットの使用や、住み家となる雑草の除去などが重要になります。

写真2 アザミウマ類の被害痕

●アザミウマ類の捕殺数と収穫物の被害状況(令和4年4月~12月)

聞き取り調査の結果、アザミウマ類の被害が多いことが明らかとなったため、ホウレンソウの周年出荷を行っている東久留米市の一戸で、青色粘着板による捕殺数の推移と、収穫物における被害状況についても調査しました(図2、3)。
捕殺数は4月下旬から増加し、6月下旬にピークを迎え、その後8月下旬まで多い状態が続きました。また、10月から11月にかけて、捕殺数は少ないものの、収穫物への被害が6月と同程度ありました。これは、新葉が展開するごく初期の状態で被害を受けたものと考えられました。
なお、4月13日、10月6日に収穫したホウレンソウは、被害が少ない結果となりましたが、この時はアザミウマ類の被害を抑える効果があるとされている、近赤外線除去(UVカット)フィルムを使用していました。捕殺数の多い時期ではないため、あくまで参考となりますが、被害軽減に一定の効果があったと考えられます。

図2 アザミウマ捕殺数
図3 収穫物被害状況

3.まとめ

ホウレンソウの病害虫防除は、適切な農薬使用だけでなく、抵抗性レースを踏まえた品種選択、適切な被覆資材の利用、こまめな換気等を組み合わせた、総合防除技術に取り組む必要があります。普及センターでは、今後、軟弱野菜の効果的な防除技術について検討を行っていきます。