2023 新春号 Vol.122
営農レポート
野生動物から農作物を守るために
JA東京みどり管内では、収穫直前のトウモロコシやブドウ等がハクビシン、アライグマ、タヌキ等の中型動物に食べられる被害が依然として多く、適切な対策が必要です。彼らは夜行性で警戒心もあるためなかなか見かける機会がなく、私たちが想像しているよりもはるかに多く生息しています。そのため、罠を用いて捕まえても被害をなくすことは到底できません。
しかし、農作物に近づくことができなければ被害は発生しません。そこで、今回は中型動物に特化した電気柵、通称「楽落(らくらく)くん方式」について紹介します。
「楽落くん方式」の基本的な構造は、畑を囲った網の上端に電線を1本通すというもので、中型動物が網を超えようと登ると感電します(図)。埼玉県農業技術研究センターで考案され、商品化されています。この方式による侵入防止の成否は、設置と点検が適切かどうかに左右されます。そこで、「楽落くん方式」の使用のコツを紹介します。
1.電線を張った状態にし、網の間隔を5㎝以内に保つ
圃場に近づいた中型動物を感電させるためには、毛で覆われていない鼻先を電線に触れさせることが必要です。網の上端と電線との間隔を5㎝以内に保つことが最も効果的とされています。結束バンドを用いると、電線と網の間隔を一定に保つことが簡単にできます(写真3)。またしばらく設置していると、動物が体重をかけたり、強い風が吹いたりすることで電線が緩んでしまいます。こまめに点検し、電線に常にテンションがかかる状態を保ってください。
2.網の下からくぐられないようにする
野生動物は、障害物に行き当たると「登る」ことよりも「くぐる」ことを選択しがちです。そのため、網の下に隙間があると、そこを掘って侵入を試みます(写真4)。圃場の凹凸をなくし、U字杭等で地面に網を固定してください(写真5)。網の下を掘られていないか点検し、必要に応じて土寄せとU字杭等によって侵入経路を封鎖します。
4.電気柵の四隅は支柱を複数本立てる
「楽落くん方式」では、網と電線に常にテンションをかける必要があるため、四隅の支柱が1本のみだと負担がかかり、倒れやすくなります。設置する際は、四隅の支柱を複数本立てることで負担を分散し、強度を確保しましょう(写真6)。
4.漏電に注意する
電線に草や障害物が接すると、そこから漏電するため、感電させることができません。点検を適宜行い、電線に触れるものがない状態を保ってください。また、電気柵とセットで通電テスターも販売されているので、通電の確認もこまめに行ってください。
「楽落くん方式」を上手に使うことで、中型動物による被害を大幅に減らすことができます。収穫直前で悔しい思いをしないためにも、来年に向けて対策強化を検討してはいかがでしょうか。