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2022 秋号 Vol.121

営農豆知識

かんきつ類の冬場の防寒対策

最近の温暖化の影響もあり、畑や庭先にかんきつ類が栽培されているのをよく見かけるようになりました。温州ミカンは武蔵村山市を中心に以前から栽培されていますが、レモンなどの冬の寒さに弱い種類も増え始めています。
今回は、時期的に少し早いですが、かんきつ類の冬場の防寒対策を取り上げてみました。

1.栽培に適した気温

表1 主なかんきつ類の栽培に適する気温
(果樹農業振興基本法などより)

種類 年平均気温 冬期の最低気温
ユズ 13℃以上 ―7℃以上
カボス、スダチ 14℃以上 ―6℃以上
温州ミカン 15℃以上 ―5℃以上
いよかん、はっさく 15.5℃以上 ―5℃以上
レモン 15.5℃以上 ―3℃以上
ネーブルオレンジ、甘夏みかん、清見、
デコポン、せとか、はるみ、ぽんかん
16℃以上 ―5℃以上

表2 管内周辺の気温
(気象庁アメダス平年値より)

地区名 年平均気温 最低気温(1月)
八王子 14.7℃ ―1.8℃
府中 15.4℃ ―0.7℃
青梅 14.3℃ ―2.3℃

2.低温による被害の様子と限界温度

最近では、平成29年から30年にかけての冬が低温の日が多く、1月は最低気温はマイナス8.7℃を記録しました(八王子アメダスデータ)。
そのため、管内でも温州ミカンやレモンなどの幼木を中心に樹の枯死や枝枯れなどが多く発生しました。調査によると、温州ミカンは、マイナス6℃に3時間遭遇すると落葉などの被害が発生し、寒さに弱いレモンでは、マイナス6℃が5時間以上続くと樹は凍結・枯死するとされています。

低温で全体の葉が白くなった
温州ミカン成木(30年4月)

3.防寒対策

  1. (1)植える場所の選定
    •  冬に北風の当たらない、日当たりのよい温かい場所に植えます。
    •  畑の周囲、特に北側に防風網や防風樹(垣根)を設置します。
    •  寒気のたまりやすい窪地は避けます。
  2. (2)苗木の防寒
    •  幼木は耐寒性が低いので、枝葉が茂って大きくなるまで(1年生苗木を植えてから3~4年)は、防寒対策が必要です。
    •  できれば苗木は3年ほどは風の当たらない温かい場所に仮植えしておき、寒さに慣れてきたら畑に本植えするとよいです。
  3. (3)防寒の方法
    •  冷気や風を遮断できるように、被覆資材(コモ、稲わら、寒冷紗、畳表、不織布等)で、樹全体を直接覆うか、または、支柱等を樹の周りに立ててあんどんのように囲みます。
    •  資材は厚手のものがよく、薄いものだと放射冷却でかえって樹が冷えてしまいます。
    •  透明ビニールなど日射を通して通気の悪いものでは、日中温度が上がってしまうので、注意してください。
  4. (4)被覆資材による防寒事例
    •  ひもで枝を軽くたばねて、通気性のよいコモ、稲わらなどで包みます。
    •  時期は12月中下旬から3月上中旬まで。あまり早いとかえって木が衰弱します。
ひもで枝を束ねる
稲わらで包む
パオパオで包む
コモで包む
パオパオであんどん状に囲む(一重ではやや薄い)

もともと、かんきつ類は常緑性で温かい地方の原産なので、寒さに弱い果樹です。寒害は冬の一夜、あるいは2~3日の低温で発生します。せっかく植えた苗木が枯れないよう、事前の備えをしっかりとしましょう。