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2022 夏号 Vol.120

税務・法律・年金相談

昨今話題の税務トピックスを紹介します

1.最高裁判決「伝家の宝刀」によりタワマン節税は封じ込められた?

本年4月に税務に関する2本の最高裁判決が出ました。どちらも国税当局側の「伝家の宝刀」と呼ばれる税法で認められた「後出しルール」に関する判決でしたが、2本の最高裁判決は正反対の結果となりました。
大手レコード会社の組織再編に絡んだ訴訟については、国税当局側の課税処分を全て取り消す判決(国税当局側の負け)を下しました。こちらの内容は限られた紙面の関係上割愛しますが、もう一方のタワマン節税に関する最高裁判決は、国税当局側の「伝家の宝刀」の適用を認め、納税者側の敗訴となりました。
裁判で争われたのは、納税者側が相続で取得したマンションの相続税評価の正当性です。故人は90歳を過ぎてから2棟のマンションを14億円ほどで購入しましたが、相続人が申告した実勢価格が反映されていない相続税評価額は約3億円ほどでした。さらに借入金を差し引いた課税価格は基礎控除額以下となり、結果として納税額はゼロとなりました。これに対し国税当局側は不動産鑑定評価を依頼し、2棟のマンションの評価を約13億円弱とするとともに、相続税額2億4千万円の追徴課税を行いました。相続人は画一的な評価方法である評価通達を適用してマンションの評価をした訳ですが、最高裁判所はこの様なタワマン節税をできない他の納税者との間に、看過し難い不均衡が生じる節税対策であり、租税負担の公平に反すると判断したのです。
また、今回の最高裁判決では、国税当局側が「伝家の宝刀」が適用できる基準を明示することが期待されていましたが、残念ながら基準は明示されませんでした。
この判決を受け税務の専門家の中には、相続開始前○年以内の相続税対策はダメ、相続発生後短期に不動産を売却してはダメ、取得価額と実勢価格との乖離が○倍以上はダメなどの発言も散見できますが、実際はケースバイケースであり慎重な対応が必要です。

2.相続税と贈与税の一体課税はどうなる?

令和3年度の税制改正では、富裕層による財産の分割贈与による相続税の節税に対し、「資産移転を公平にすべき」という観点から、現行の相続時精算課税制度と暦年課税制度のあり方を見直し「相続税と贈与税の一体化」の検討を進めるとしていました。
そして昨年12月に発表された令和4年度の税制改正大綱でも、前述した相続時精算課税制度や贈与税の暦年課税制度のあり方を見直し、諸外国の様に相続発生から10年あるいは15年と長い期間の贈与を相続税と一体として課税する生前贈与対策が講じられるのではないかと予測されていましたが、引き続き検討するに留まりました。
この相続税と贈与税の一体課税の改正に時間が掛かっている主な理由は以下の通りです。
毎年110万円以下の贈与を長年にわたって行う行為が問題視された経緯を踏まえて、暦年課税制度の廃止を検討しましたが、年間110万円の非課税枠をなくしてしまうと、年間数万円~数十万円の細かい贈与を国税当局がどのように補足し、課税徴収を行うのか極めて困難であり、この問題を解決しないと相続税と贈与税の一体化措置を構築する上で支障が生じてしまうのです。
いずれにしろ近い将来に一体課税は導入されると予想されます。
また、現行相続税法では相続開始前3年以内の贈与は、相続税の課税価格に加算されます。
前述最高裁判決もそうですが、相続対策は短期的な視点ではなく長期的にじっくりと行いましょう。