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2022 夏号 Vol.120

営農レポート

トマト・キュウリの施設栽培で注意が必要な病気

トマトとキュウリは、これからの時期に大人気の野菜で、最近では施設栽培も増えてきました。しかし、露地では大した被害ではなかった病気が、施設の環境下で爆発的に増えてしまい、大きな減収になるということも少なくありません。そこで今回は、施設栽培のトマト・キュウリにおいて特に問題となっている病気と、その防除方法についてご紹介します。

~トマトの病気~

●灰色かび病

Botrytis cinereaという糸状菌(かび)によって引き起こされ、果実や葉、茎に発生し、病斑部に灰色のかびが密生します。20℃付近の比較的冷涼な気温と多湿条件で発生しやすいので、12~4月頃の施設栽培で特に問題になりますが、梅雨や秋雨の時期にも発生します。本菌はトマトやキュウリの他、イチゴやナス、シクラメンなど多くの野菜、花に寄生します。

防除のポイント

  • 換気をし、施設内の湿度を下げる。
  • 発病果実や茎葉は速やかに除去し、施設外に持ち出し処分する。
  • 花がらやかきとった脇芽などの残さが病気の伝染源になるので、取り除くようにする。
  • カリ欠乏による葉先枯れは、発生を助長するので適切な肥培管理を行う。

●黄化葉巻病

トマト黄化葉巻ウイルス(TYLCV)によって引き起こされるウイルス病で、タバココナジラミによって伝搬されます。症状は、はじめ生長点付近の葉の色が淡くなり、その後葉脈間が黄化して葉が縮みます。症状が進むと上位葉が小さくなり、節間が短縮して株全体が萎縮します。発病後は開花しても実がつかなくなり大きく減収してしまいます。

生長点付近の黄化と葉巻症状

防除のポイント

  • 耐病性品種を用いる。
  • 発病株は速やかに抜き取り施設外に持ち出して処分する。
  • 防虫ネットなどを利用して、タバココナジラミを施設内に入れない。
  • ほ場の見回りや黄色粘着シートの設置などを行い、タバココナジラミが見られたらすぐに農薬を散布して防除する。
  • 栽培終了時に施設を密閉して蒸し込み処理を行い、タバココナジラミを確実に死滅させる。

~キュウリの病気~

●うどんこ病

Sphaerotheca fuligineaなどの糸状菌によって引き起こされ、その名の通り、うどん粉を振りかけたような白いかびを葉に発生させます。植物体上の菌が風などによって飛散して周囲にまん延します。気温20℃前後、やや乾燥した条件下で多発しやすく、ひどいときは葉が枯れ上がってしまいます。

うどんこ病の症状

防除のポイント

  • 過度な乾燥を避ける。
  • 窒素過多で発生しやすいので、適切な肥培管理を行う。
  • 過繁茂で発生が増えるので、枝葉を適切に整理し風通しや光の透過をよくする。
  • 発生が見られたらすぐに、葉裏までかかるように農薬を散布する。

●べと病

Pseudoperonospora cubensisという糸状菌によって引き起こされ、葉のみに発生します。初め淡黄色で、ぼんやりとした小さな斑点を生じ、その後葉脈に囲まれた多角形の病斑に拡大し、多湿時では葉の裏側に暗褐色のかびを生じます。気温20~25℃の多湿条件を好み、肥料切れやなり疲れなどで草勢が衰えると激発してしまいます。

べと病の典型的な病斑

防除のポイント

  • 密植を避け、通風・透光を良くする。
  • 換気と灌水管理で、高温多湿を避ける。
  • 多発すると防除が難しくなるため、農薬の予防散布を心がける。

最後に

いずれの病気も、発生が激発してからの防除では手遅れになってしまいます。ほ場をよく見回り、病気の発生し始めを見逃さないように注意しましょう。防除のポイントにも書きましたが、抵抗性品種の導入や適切な施肥、施設内の温湿度の管理などを行い、あらかじめ病害虫の発生しにくい環境を整えましょう。
農薬は、その作物、その病気に登録のあるものを使用し、散布する場合は葉裏にもかかるように丁寧に行ってください。また、作用の仕方が同じ農薬を繰り返し使用すると、その剤に耐性を持つ菌が増えてしまいます。種類の異なる農薬を順番に用いるローテーション散布を行いましょう。
何か不安なことがあれば、お近くのJAや中央農業改良普及センターにご相談ください。

写真提供:東京都病害虫防除所