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2022 春号 Vol.119

営農レポート

スマート農業に取り組んでみましょう!

近年、スマート農業という言葉がよく使われるようになってきました。農林水産省は、スマート農業とは、農産物の品質向上や農作業の省力化を目的として、無人の農機(ロボット技術)や、情報通信技術(ICT)を活用して行う農業のこととしています。メディアでは、無人のトラクターや農薬散布用ドローンといった機械が「最先端のスマート農業」として紹介されていますが、現在のところこれらは広大な農地を持つ大規模産地向けであり、東京のほとんどの農業者にとっては実用的とは言えません。そこで今回は、東京の農業者も取り組みやすいスマート農業についてご紹介します。

都内で広がるスマート農業・環境モニタリング

自分の圃場の観察や圃場環境の計測することで、生育不良や病虫害の原因を究明し、改善することができます。例えば、百均などで購入できる温度計を圃場に多数設置し、定期的に確認・記録し栽培の改善に役立てていくことも「環境モニタリング」であり、スマート農業の入口と言えます。
温度や日照、炭酸ガス濃度等のセンサと、それらを制御しデータを記録するコンピュータからなるモニタリング装置を導入し、圃場環境の「見える化」を進めることで、見回りの労力を軽減しながら栽培管理の精度を向上できます。圃場にインターネット回線を整備すれば、好きな時に好きな場所から施設内の状況をスマートフォンで確認することもできます。

圃場環境をスマートフォンで確認

環境制御

近年の栽培施設では、窓の開閉や灌水など作業の自動化が進んできました。しかしこれまで導入された設備は、生産者の経験や勘に基づいて設定値を決めるものが主流でした。
最近は、安価で高性能なコンピュータやセンサの出現で、導入コストの低減と共に、センサを多数設置することによる詳細なデータの把握なども可能になり、勘だけに頼らない、より科学的な環境制御機器が現実のものになってきました。これらを導入することで、圃場環境を高度、かつ省力的に管理することができるようになります。

環境制御を導入したトマト栽培施設

経営管理

作業日誌や農薬使用履歴などの栽培や販売等の記録は、経営改善のため欠かせないものであり、後継者や従業員に技術を伝えるためやHACCPへの対応にも役立ちます。しかし、こうした事務作業は農業者にとって大きな負担でもあります。最近、栽培管理や販売状況を簡単に記録できる様々なスマートフォン用アプリが開発され、圃場で作業の合間に記録できる手軽さから、利用する農業者が増えてきています。農薬検索や栽培計画の作成など便利な機能を持つアプリもあるので、いろいろ試して自分に合ったものを探してみると良いでしょう。
また都内では、消費者が身近にいるというメリットを活かし、個人による農産物の直売が広く行われています。身近で新鮮な農産物を買える魅力がある一方で、消費者にとっては「開店しているか、欲しい農産物が売られているか、行ってみないとわからない」「すぐに売り切れてしまう」といった利用しにくい面もあります。そこで東京都農林総合研究センターが民間企業や東京大学と協力し、直売所に設置したウェブカメラで直売所の様子をリアルタイムに発信できるシステム「見えベジ」を開発しました。ウェブカメラの画像と直売所の場所などの情報がウェブサイト「チョクバイGo!」上に公開されており、消費者は近所の直売所を検索し、事前に品揃えを確認することで、より気軽に直売所を利用できます。一方生産者も、畑仕事をしながら農産物の売れ行きを確認して適切に商品を補充したり、売れ筋の農産物の販売数を増やしたりすることで、固定客の確保や販売の安定化が期待できます。

「見えベジ」の活用イメージ
※撮影:立川市 あみちゃんファーム
「チョクバイGo!」…https://veggie.co.jp/