2022 新春号 Vol.118
営農レポート
大事な収穫物を野生動物に食べられないために
ブドウやナシなどの果物やトウモロコシなどの野菜の生産者にとって、ハクビシンやアライグマ、タヌキなどによる食害は非常に大きな問題です。都内におけるこれらの野生動物による農作物の被害金額は令和元年度に1000万円を上回りました。これ以上、被害を大きくしないためにも、効果的な対策をしっかり行いましょう。
獣害対策にとって最も重要なことは「侵入経路をなくすこと」
収穫直前の果物や野菜は我々人間だけでなく、野生動物にとっても、ごちそうになります。これらの野生動物は私たちが想像するよりも多く生息し、常に縄張り争いをしているので、一匹捕まえてもすぐに別の個体がやってきて加害し続けます。 しかし、いくら野生動物がいても、作物に近づくことができなければ被害は発生しません。「侵入経路をなくすこと」が、最も効果的な獣害対策です。
どうやって侵入経路をなくすか
●果樹編:多くの果樹園は防風ネットが側面に張られ、防鳥ネットで上面が覆われています。獣害対策では、これを最大限に活かしつつ、下記のポイントを押さえてください。
①ネットの穴やすき間をなくす
ハクビシンは、4㎝四方の穴があれば侵入できることから、ネットに穴が空いている場合は、張替えもしくは補修を行ってください。また、ネットと地面のわずかな隙間でも、野生動物は侵入できるため、ネットをU字杭で地面に固定しましょう。特に出入口は、作業の都合上ネットを固定できず、隙間ができやすいので、すそを足場パイプで押さえる等の工夫が必要です。
②電気柵を設置する
ハクビシンやアライグマ対策として、網の上端から5㎝上に1本の電線を設置して、網に登ったところを感電させる、通称「楽落(らくらく)くん」方式が効果的で、農協を通じて購入可能です。使用方法等の詳細は、開発元である埼玉県農業技術研究センターのホームページをご覧ください。
●野菜編:トウモロコシ等の野菜は、畑の中で栽培する場所を年によって変えることが多いため、設置が容易な簡易電気柵が適しています。ハクビシンやアライグマ、タヌキといった中型動物に対して、簡易電気柵を使って防御する場合は、下記のポイントを押さえてください。
③簡易電気柵を設置する
地面から5㎝間隔で電線を張ることが重要です。それより広いと、ハクビシンが隙間を通過してしまいます。また、雑草が電線に触れると漏電して電力が弱まるので、草刈りと除草剤の散布を行ってから柵を設置してください。
●園地周辺に近づきやすい環境を作らない
出荷できない果実を園地周辺に捨てることは、野生動物に良いエサ場を提供するのと同じです。これらはフタ付き容器に溜めて、果樹園から離れた場所に廃棄してください。また、園地周辺の草木を刈って、野生動物が身を潜める場所を作らないことも重要です。