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2021 夏号 Vol.116

税務・法律・年金相談

農業経営の移譲について

近頃、新聞やテレビなどでは「人生100年時代」という言葉をよく見聞きするようになりました。高齢者は、65歳以上の人をさし75歳以上の人は後期高齢者といいます。昔は、後期高齢者は少ない存在でしたが、現在では平均寿命が男性81歳、女性87歳となり高齢者に該当する人は「人生100年時代」も身近に感じていることと思います。

そして、健康上の問題で日常生活が制限されることなく生活できる期間は健康寿命といわれます。健康寿命は男性72歳、女性74歳と発表されています。平均寿命と健康寿命の差異は日常生活に制限のある「健康でない期間」となります。この差異は男性9年、女性13年です。

この「健康でない期間」には現在の日本社会がかかえる多くの問題が重なります。それは、毎日のように発生しているオレオレ詐欺のターゲットとされること、各医療機関に対して得意先となることを含む介護問題、認知症問題の発生により周りの人々に負担をかけることになります。そして、最期に訪れるのは相続問題となります。

農業経営の多くは家族経営のため、いまだ古くからの習慣と世間への気兼ねにより農業経営の移譲が相続時まで引き伸ばされることが多く見受けられます。

日本政府は国民を豊かにするために各国とTPP(環太平洋パートナーシップ)やEPA(EUとの経済協定)、RCEP(中国を含む包括的経済連携協定)を結んで経済の自由化を推進しています。

農業産物は外国から輸入される農作物との競争がさらに厳しくなります。消費者の需要を勝ち取るのは価格と安心感ですが、コメの需要は、外食産業では高価格の国産品から外国産優先に傾いています。ほかの作物も同じような傾向をたどるかもしれません。都市近郊の農業は作物を作る第一次産業からひと手間加えたカット野菜、発酵農産物などの加工食品の第二次産業や遊び心を加えた第三次産業に変わることを時代が求めています。新しい産業に生まれ変わるにはチャレンジ精神とプロの農業経営者としての自覚が必要になります。

生産緑地法改正は、農地の新たな使途や賃貸借を緩和して市民農園やシェア畑の形で一般の人にも農地を開放する方向です。新たな参加者である農業初心者の方は楽しそうに家庭菜園をしています。

このような時代の変化の中では、所得税の申告に関しても親から子への経営権の委譲が必要になってきます。これは、相続発生時に遺産分割でのトラブルを回避につながり農業に従事していない他の相続人に対する相続対策にもなります。

農業経営の移譲については以下のような手続きが必要になります。

1.農業委員会への手続き

農業経営を移譲するには農業委員会への「農業経営者変更届」が必要になります。

2.経営を移譲した親の手続き

税務署に対して「個人事業廃止届」

3.経営移譲を受けた子供の手続き

税務署に対して「個人事業開始届」「所得税の青色申告承認申請書」「青色事業専従者給与届」
新たに〇〇農園として各市場に通知して、ここから活動が始まります。

農業経営の資本は、田や畑地ですから多くの場合は親の農地を無償で使用することになります。生計を一にしている親の農地や建物・作業小屋などの資産を無償で農業事業に使用した場合、それらにかかる固定資産税や農機具等の減価償却費などは子供の経費とすることができます。

無償使用の農地については贈与税の課税はありません。

農地、建物以外の農業に必要な機器であるトラクター、車両、耕運機やそのほかの農機具は贈与があったものとして取り扱われますが、農業用資産が110万円以下であれば贈与税の申告は必要ありません。