2021 春号 Vol.115
税務・法律・年金相談
年金の繰下げ受給の落とし穴(留意点)
「人生100年時代」と言われるなか、年金の繰下げ出来る年齢を70歳から75歳に引き上げる法案も可決され、2022年4月から実施されます。今回は、この繰下げ受給についてポイントをまとめてみたいと思います。
(現在の制度では、繰下げ可能な年齢は70歳までなので、それを前提に説明いたします)
■ 繰下げ受給って何?
年金を遅らせて受給することにより、年金額が増額される仕組みです。
本来65歳から受け取る老齢年金を65歳で請求しないで、66歳以降70歳までの間(月単位)で申し出た時から繰下げて請求できます。
年金額は1カ月遅らせるごとに0.7%ずつ増え、70歳まで遅らせると42%年金額が増額されます。
繰下げ受給は、老齢基礎年金と老齢厚生年金の両方同時にでも、どちらか一方だけでも出来ます。
※65歳前に受給する「特別支給の老齢厚生年金」には繰下げ受給の制度はありません。
■ 繰下げ受給の総受給額逆転年齢(損益分岐点)
本来通り65歳から受給した場合と66歳以降繰下げて受給した場合の年金受給総額が逆転する年齢は、繰り下げてもらい始める年齢に約12年を足した年齢になります。
もらい始める年齢 | 逆転年齢 |
66歳 | 78歳 |
67歳 | 79歳 |
68歳 | 80歳 |
69歳 | 81歳 |
70歳 | 82歳 |
■ 留意点
①加給年金と振替加算は増額しない
厚生年金加入者が条件を満たせば、65歳から配偶者が65歳になるまで配偶者加給年金が加算されます。またこの配偶者には生年月日によりますが、老齢基礎年金に振替加算額が加算されます。これらは繰下げしても増額しません。言い換えると繰下げ待機期間中は、この2つは捨てるのと同じことになります。
その結果、逆転年齢は更に長くなります。
※特に配偶者加給年金額は年額約39万円と大きいので影響は大きくなります。
《例》老齢厚生年金年額100万円・配偶者 1歳年下で66歳から繰下げ受給する場合
逆転年齢は83歳になり5年間長くなります。
②「額面ほど手取額が増えない場合がある
年金額が増えることにより税金・社会保険料が増え、(簡単には計算できませんが)額面通り増えない場合があります。
☞《アドバイス》
年金は1度手続きすると取消しは出来ません。また年金は一人一人違います。手続の前にJAの年金相談会等で自分の年金を確認・点検しましょう。