2021 新春号 Vol.114
税務・法律・年金相談
令和2年分確定申告の注意点
謹んで新春をお祝い申し上げます。 さて、まもなく所得税の確定申告の時期が訪れます。基本的なおさらいを含めて確定申告の注意点について主だったものをまとめてみました。
1.農業所得の注意点
①農業所得の収入計上基準は「収穫基準」です。
農産物は「収穫した時」、農産物以外は「販売した時」が収入計上の時期となります。
年末において未販売の農産物(例えば馬鈴薯、甘しょなど)は棚卸資産として翌年に繰り越すことになります。なお、「生鮮野菜等」は収穫基準を省略できます。
②コロナ禍の持続化給付金は「雑収入」として収入計上します。非課税ではありませんので注意が必要です。
③家事消費を計上していますか。
遙か昔には、国税庁が3歳以上の家族は1人いくらと家事消費の目安を発表していましたが、現在は農産物などの販売価額から消費した金額を見積もって収入計上します。
④JAや市などからの補助金・助成金は「雑収入」として収入計上します。
⑤一昨年から開始された「農業収入保険」は経費に算入できる保険料が複雑ですので、支払金額を全額経費算入するのではなく明細等を良く確認して経費算入しましょう。
⑥農産物以外の棚卸を計上していますか。
年末に残っている農産物以外(例えば肥料、段ボールなど)は棚卸が必要です。
2.不動産所得の注意点
①不動産所得の収入計上基準は「権利確定基準」です。
借主側の家賃の入金が遅れている場合にも、いったんは未収分として収入計上する必要があります。その後、収入に計上した未収家賃が貸し倒れになったときには、原則として一定の基準により貸し倒れた金額をその貸し倒れた年分の経費に算入します。
②保証金の処理方法は注意が必要です。
店舗などの契約を結ぶ際、保証金の償却が契約上記載されている場合には、その償却分をその償却が確定する年分の収入として計上する必要があります。
③東京電力から支払われる3年ごとの電柱敷地料などは不動産収入に計上する必要があります。
④「修繕費」と「資本的支出(減価償却)」に注意しましょう。
原則的に通常の維持修繕の費用(例えば外壁塗装や屋上防水工事など)は修繕費となりますが、価値自体を高める、耐久性が増すような支出(例えば駐車場を砂利敷きからアスファルト敷きに変更するなど)は修繕費とはならず、資本的支出として減価償却が必要です。
3.消費税の注意点
①簡易課税を選択している組合員の方は、JAからの手数料などを差し引いた振込金額ではなく「販売額の総額」を収入計上して下さい。
②①と同じく、店舗などを建設した際「建設協力金」を受け取っている場合には、家賃から「建設協力金」の分割返済額を差し引いた後の金額ではなく、「家賃の総額」を収入計上して下さい。
③持続化給付金は農業所得としては「雑収入」に計上しますが、消費税は課税されません。
④借主負担の原状回復費用(修繕費など)は消費税の課税売上となります。
4.その他の注意点
①「農業所得」の赤字を「不動産所得」など他の所得とのプラスマイナス(損益通算)する場合は注意が必要です。
みどりっ子や市場、スーパーに出荷している、店先販売を行っているなど事業的規模をクリアしていれば「不動産所得」などの他の所得との損益通算は問題ないのですが、自家消費分のみの収入計上である場合などは損益通算が否認される可能性が高いので注意が必要です。
②還付加算金に注意
前年分還付申告を提出したなどで本税に加えて還付加算金が入金された場合は、「雑所得」として申告が必要です。(税務署からのハガキに記載があります。)
③青色専従者給与の注意点
青色専従者給与は実際に支給していることが経費となる条件です。また、実際のところ専従者は専ら農業に従事しているのに関わらず農業所得から専従者給与を支給できないので、便宜上不動産所得から支出しているような場合は注意が必要です。