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2021 新春号 Vol.114

営農レポート

ホウレンソウ べと病の防除について

ホウレンソウは抗酸化作用のあるβカロテン、塩分の排出を促すカリウム等が含まれていて、栄養価の高い野菜として消費者からも人気があります。都内でも各地域で栽培されており、重要な品目となっています。
そのホウレンソウの重要病害の1つにべと病があります。べと病はいったん発生すると速やかに周囲の株へ感染を拡大させ、大きな被害をもたらすことがあります。今回は、ホウレンソウのべと病の特徴や防除方法について紹介します。

被害の様子

本病は、はじめは葉の表面に小さな黄白色で不整形の斑点が現れます。病斑の拡大に伴って、淡黄色または淡緑色の不整形の病斑になります(写真1)。病斑部の裏面には、ねずみ色または灰紫色で粉状のカビを生じます(写真2)。さらに症状が進むと、葉が全体に黄化し枯死に至ります。

淡黄色の不正形の病斑
写真1 淡黄色の不正形の病斑
葉裏の灰紫色のカビ
写真2 葉裏の灰紫色のカビ

病原菌の特徴

本病の原因は糸状菌であるPeronospora farinosa f. sp. Spinaciaeで、ホウレンソウのみを侵します。本病の伝染源は、主に被害株や発病残さです。被害株や発病残さに菌が生存し、条件が整うと分生胞子が作られ、風などによって飛散して伝染します。
べと病の発病適温は10~20℃程度で、曇りや雨が多く、多湿な状態が続くと発生しやすくなります。露地栽培では春と秋に発生が多いですが、トンネルや施設栽培では冬にも発生します。特に密閉すると湿度が上がり発生しやすくなります。

抵抗性について

本菌には、ホウレンソウの品種に対して病原性が異なる「レース」の存在が知られています。例えば、あるホウレンソウ品種Aに強い病原性があるべと病菌aと、接種しても発病しない菌bとが存在します。この場合、品種Aのホウレンソウは菌aに罹病性、菌bに抵抗性があるといいます。令和2年10月現在、ホウレンソウべと病菌はレース1から17まで報告されています。また、国内ではレース13まで報告されています。本病に対しては抵抗性品種が開発されており、種苗会社のカタログや種子の袋に「べと病R-1~7抵抗性」といった表示がされているので、品種選びの参考にしてください(表1)。しかし、全てのレースに抵抗性を持つ品種はないため、抵抗性だけに頼らず、その他の耕種的防除や薬剤による防除も併用するとより効果的です。


表1 管内主要品種のべと病に対する抵抗性

品種名 種苗会社 べと病に対する抵抗性※
ハンター カネコ種苗 R-1~7・9・11・13・15・16
スナイパー カネコ種苗 R-1~11・13・15・16
クロノス サカタのタネ R-1~7・9・11・13・15・16
オシリス サカタのタネ R-1~10・15
福兵衛 タキイ種苗 R-1~12・14・15
アステアブラック 朝日工業 R-1~11・13・15
ショータイム 渡辺農事 R-1~12・14・15

※メーカーHPやカタログに記載されている抵抗性

防除方法

(1)耕種的防除

  • べと病に対する抵抗性に留意して品種を選択しましょう(表1)。
  • 厚播きや多肥を避け、軟弱に生育しないよう注意しましょう。
  • 多湿にならないよう水はけを改善し、雨よけやマルチを活用しましょう。
  • ハウスやトンネルの密閉を避け、適度な換気を行いましょう。
  • 発生圃場では、収穫後の残さをほ場外に持ち出して処分しましょう。

(2)薬剤による防除

発病してからの防除では手遅れのため、表2を参考に予防を徹底しましょう。(農薬の使用にあたっては、最新の登録情報を確認のうえ、必ず使用基準を守ってください)


表2 ホウレンソウべと病に登録がある農薬例(令和2年10月30日現在)

農薬名 作用機構分類コード 使用時期 使用回数 使用方法
ユニフォーム粒剤 11・4 は種前 1回 全面土壌混和
コサイド3000※ M1 散布
ヨネポン水和剤 M1 収穫14日前まで 4回以内 散布
アリエッティ水和剤 P7 収穫前日まで 2回以内 散布
フェスティバル水和剤 40 収穫前日まで 3回以内 散布
レーバスフロアブル 40 収穫3日前まで 2回以内 散布
ライメイフロアブル 21 収穫7日前まで 2回以内 散布
ランマンフロアブル 21 収穫3日前まで 3回以内 散布
ピシロックフロアブル U17 収穫前日まで 2回以内 散布

※品種によっては薬害を生じることがあるので、事前に確認する等、注意して使用してください