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2016 夏号 Vol.96

営農レポート

作用機構分類コードを活かして、農薬を選びましょう!
~東京都病害虫防除指針に作用機構分類コードが記載されました~

難防除病害虫として知られる「アザミウマ類」や「コナジラミ」などの害虫、「うどんこ病」や「べと病」などの病気の被害は北多摩地域でも年々増加しており、防除に苦労されていることと思います。難防除とされる病害虫の多くは同じ系統の農薬を使い続けることにより薬剤抵抗性が発達し農薬の効果が低下しています。
今回は、薬剤抵抗性を発達させないための農薬の分類情報として、平成28年度から東京都病害虫防除指針に新たに掲載された作用機構分類コードの利用方法について説明します。

(1)農薬の作用機構

農薬の作用機構とは、農薬が病害虫に作用するメカニズム(病害虫に対して農薬が効く仕組み)のことです。作用機構が同じグループの農薬を連用すると、病害虫の抵抗性(薬剤耐性)が発達し、農薬の効果が低下することが知られています。
病害虫の抵抗性の発達を抑制するためには、同じ農薬の連用を避けることはもちろん、同じ作用機構を持つ農薬の連用も避けることが大切です。

(2)農薬の作用機構コード

農薬の作用機構分類については、世界農薬工業連盟(CLI)傘下の3つの対策委員会(IRAC:殺虫剤抵抗性対策委員会、FRAC:殺菌剤耐性菌対策委員会、HRAC:除草剤抵抗性管理委員会)が、農薬の有効成分を病害虫に作用する機構ごとに分類し、分類番号(コード)を定めています。

●殺虫剤の場合(IRAC コード)

数字で表される主要グループのみで標記させるものと、さらにA、B等のアルファベットで表されるサブグループとの組み合わせで標記される場合があります。(例:1A 1B 28など)なお、UNは作用機構が不明な農薬です。

サブグループだけが異なる場合は、作用機構は同じなので、薬剤抵抗性が発達しやすいです。そのため、サブグループ間(例えば1Aと1B)の農薬の連用は、なるべく避けましょう。農薬のローテーション防除を考える場合は、数字の違う農薬を選ぶように心がけましょう。

●殺菌剤の場合(FRAC コード)

数字のほかに、同時に複数の作用機構に効く農薬をMと表示しています。(例:17 16.1 M8など)なお、NCは未分類、Uは作用機構が不明な農薬です。また、農薬作用分類一覧に従った分類ができない農薬(天敵など)は「-」で示しています。

殺虫剤と同じように農薬のローテーション防除を考える場合は、数字の違う農薬を選ぶように心がけましょう。

(3)表示の例

これまでの防除指針は、農薬の系統別に分類した有機リン系やマクロライド系等の「系統区分」(下記①の欄)のみを記載していました。(農薬ハンドブック2011版(社)日本植物防疫協会編等を参考) 
しかし、IGR剤(昆虫成長制御剤)で系統区分され、1つのグループになっているものでも、昆虫成長を制御する方法が、キチン生合成阻害によるもの、ホルモンの影響によるもの等、制御の方法が違います。その制御の方法(=作用機構)に分けて、番号をつけたものが「作用機構分類コード」(下記②の欄)です。

これからは、農薬の抵抗性を発達させないために、作用機構分類コードを利用してローテーション防除を行ってください。

●殺虫剤の場合

殺虫剤の場合

●殺菌剤の場合

殺菌剤の場合