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2016 春号 Vol.95

営農レポート

古くて新しい多機能資材「石灰窒素」を見直してみませんか!

『石灰窒素』という農業資材をご存知でしょうか。昨年7月、JA東京みどり管内の生産者団体が日本石灰窒素工業会の技術顧問を招いて、石灰窒素の使い方に関する講習会を開催しました。ご参加いただいた方にはおさらいとなりますが、今回はこの古くて新しい石灰窒素の効能を紹介します。

石灰窒素とは

石灰窒素はもともと窒素肥料として開発され、日本では戦後の食料増産に大きな役割を果たしました。同時に、その主成分に農薬効果があり、現在は農薬としても登録されている特殊な資材です。石灰窒素には「農薬効果」「肥料効果」「土づくり効果」の3つの効果が期待できます。

農薬効果

石灰窒素の主成分であるカルシウムシアナミドが土壌中の水分と反応してシアナミドになります。このシアナミドに触れた病害虫や雑草種子に対して殺菌・殺虫・殺草効果があります。シアナミドはさらに水分と反応して、夏には3~5日、冬では7~10日間程度で尿素に変わります。この期間が農薬として効果を示す期間になります。

農薬としての「石灰窒素」適用情報(野菜類、キャベツ、はくさいのみを抜粋)
作物名 適用病害虫/雑草 希釈倍率・使用量 使用方法 使用時期 本剤の使用回数
野菜類 センチュウ類 50~100kg/10a 散布後土壌混和 は種前又は植付前 1回
野菜類 一年生雑草 50~70kg/10a 散布 は種前又は植付前 1回
キャベツ 根こぶ病 100~200kg/10a 散布後土壌混和 は種前又は植付前 1回
はくさい 根こぶ病 100~200kg/10a 散布後土壌混和 は種前又は植付前 1回

肥料効果

石灰窒素は、窒素成分を20~21%含有しますが、農薬として効果を発揮するシアナミドは土中に残留することなく、尿素、アンモニア、硝酸へと順に変化していきます。石灰窒素からのアンモニアは土壌コロイドに良く吸着されるため、窒素肥料としてゆっくりと効く(緩効性)という特徴があります。また、アンモニアと硝酸のバランスが良いため、葉物等では葉色や光沢など品質が向上します。
さらに、アルカリ分を55%含むため、苦土石灰と同レベルのpH矯正や石灰成分を補う効果も期待できます。ただし、苦土石灰とは異なり苦土成分は含みません。

土づくり効果

石灰窒素には、未熟な有機物の腐熟を早める効果があります。例えば、稲ワラをすき込む際に混ぜると腐熟が30日程短縮されるというデータもあります。もちろん野菜残渣や緑肥のすき込みの際にも利用できます。堆肥製造にも有効で、使用量は稲ワラ500kgに対して、石灰窒素15kgが目安です。

その他・注意事項

  • 石灰窒素の製品には、基本となる「粉状」に加え、散布しやすい「粒状」、「防散」の3タイプありますが、肥効や防除効果は同じです。
  • 農薬としての効果を期待して使用する場合、作物の種類に応じた窒素量にもご留意ください。
  • シアナミドは皮膚に対して刺激性があるので、使用時には皮膚に付着しないよう注意してください。また、人体内でアルコールの分解を抑制するので、散布作業当日の飲酒は控えてください。

以前にも本誌面で指摘しましたが、キュウリの立枯れ症状やダイコンの白斑症状など、残念ながら当地ではセンチュウの被害が後を絶ちません。そろそろ春夏野菜の作付に向けた畑の準備をする季節となりました。センチュウ対策をはじめ様々な機能性が見直される「石灰窒素」を活用してみてはいかがでしょうか。