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2016 新春号 Vol.94

営農レポート

獣害に備える~ハクビシンとアライグマの基礎知識~

近年、北多摩地区でもハクビシン等による獣害が増えています。そこで本号では、今後も被害の増加が心配されるハクビシンとアライグマの基礎知識を紹介いたします。アライグマとハクビシンにはいくつかの共通点があります。それは①雑食性で何でも食べること、②水路や側溝を通路に使うことが多いこと、③人家の屋根裏や壁の隙間をネグラや出産場所として使っていることなどです。では、それぞれの特徴を見てみましょう。

<ハクビシン>

ハクビシンの足跡ジャコウネコの仲間です。眉間から鼻にかけての白い線が特徴で、名前の由来でもあります。尾がすんなりとして長いのも特徴です。夜行性なので、見かけても野良猫だと思ってしまうことが多いようです。右の写真を見てください。小金井市のある農家の農機具庫の竪樋です。竪樋にこんな足跡があったら、その建物の屋根裏はハクビシンの巣かネグラになっています。当然、この建物のまわりの畑はここに住むハクビシンの餌場になります。農機具庫や母屋の竪樋を時々チェックし、ハクビシンが住み着いていないか確認してください。母屋の屋根裏に住み着いた場合は非常にやっかいです。「溜め糞」をするので、放置しておくと、ハエやダニが大発生したり、天井が抜け落ちることがあります。天井の壁から離れた場所にシミが出てきたら要注意です。居そうな場合は、屋根裏を懐中電灯で照らして糞などがないか確認します。もし、ハクビシンがいたら、目を見つめてください。目が合うと逃げ出して、しばらくはその屋根裏には近づきません。掃除機の音も苦手なようですので、追い払いに掃除機を使っても良いでしょう。逃げたら、その方向をたどり、侵入場所を探して塞ぎます。糞をしっかり掃除して、殺虫剤と消毒薬(逆性石鹸など)を散布しておきましょう。巣やネグラ以外では「溜め糞」はしませんが、ハクビシンは移動中水のあるところに排泄します。浅い入れ物に水を入れて置いておくと、そこに糞をしますので、近くにいるかどうかの確認ができます。

<アライグマ>

本年の7月にも、東久留米市内の農家庭先の樹上に親子でいるのが目撃されています。アライグマは、高い樹木と水路が近くにある場所での被害が多く、条件の揃う場所では要注意です。タヌキやハクビシンがいなかった場所にタヌキやハクビシンが出始めたら、アライグマが来る前兆かもしれません。彼らは元々の住処からアライグマに追い出された可能性が高いからです。屋根裏に住み着いている場合は、外の柱や壁、屋根に伸びた庭木などをチェックすると爪痕が見つかります。ハクビシンのように「溜め糞」はしませんが、屋根裏で小便をするため、壁近くの天井にシミが出てきたら要注意です。見た目はかわいいアライグマですが、非常に凶暴で噛みつきます。噛みつかれると狂犬病に感染する恐れもあります。また、アライグマの糞便にはアライグマ回虫の卵が含まれていることがあり、日本では発症例はありませんが、これが人に経口感染すると重症脳障害を起こします。アメリカでは重症例や死亡例の8割以上が6歳以下の子供です。日本で飼養されているアライグマからもこの回虫が見つかっています。追い出しや捕獲、糞便の処理は業者に頼んだ方が安全です。間違いやすいタヌキとの見分け方は、①ヒゲが白いのがアライグマ、黒いのがタヌキ、②耳の先が少しとがっていて耳のふちどりが白いのがアライグマ、耳が丸くて目立たず白いふちどりが無いのがタヌキ、③尻尾に縞々模様があるのがアライグマ、無いのがタヌキです。また、④タヌキは屋根裏ではなく、床下に巣をつくります。
その他のハクビシンとアライグマの特徴は下表にまとめました。防除対策は、駆除よりも住み着かせないようにすることが何より重要です。そのためには、①樹園等はきちんと柵で守り、生ごみや取り残し果樹、野菜や果樹の残渣など、餌になるものを放置しない、②屋根裏や倉庫などを定期的にチェックし、居たら追い出し、侵入可能な隙間を埋めて住処を与えない、の2つを実行することが基本になります。

  アライグマ ハクビシン(別名南京タヌキ)
原産地 北米カナダ南部から中米パナマ 中国から東南アジア
外来分類と侵入由来 特定外来種
昭和50年代のアニメ「あらいぐまラスカル」の人気により、ペットとして輸入されたが、逃げたり、気性が荒く飼いきれなくなった飼い主が無責任に放獣したものが野生化したものと推定されている。
狩猟獣。
外来種(法律的な扱いは在来種に準ずる)
江戸時代の絵画に登場しているため、初移入は江戸時代以前とされる。現在野生化しているもののほとんどは、毛皮目的に戦時中輸入されたものが由来とされる。初移入時期が古いため、現在のところ特定外来種には指定されていない。
狩猟獣。
食害の特徴 果樹 枝に付いた状態で果実の上から食べる。袋が汚れる。(タヌキは落ちている実しか食べない。) 枝に付いた状態で果実を下から食べて、枝にヘタ部分が残る。ブドウなどは皮は食べずに残す。袋はきれいで、人が破ったように見える。
トウモロコシ きれいに横倒しにして残さず食べる。
(タヌキもきれいに倒すが、上側だけ食べて、下側は食べない)
斜めに倒して残さず食べる。
スイカ 500円玉ぐらいの穴をあけ、きれいに中味を食べる。 自分ではスイカを傷つけられないので、カラスやタヌキなどが壊したスイカに頭をつっこんで食べる。
足跡と歩様 足跡と歩様 足跡と歩様
繁殖 通常1年1産で季節繁殖。1回の出産で1~6頭。妊娠期間は63日ぐらい。雌は生後1年で出産。子別れは次の年の発情時期。 周年繁殖だが、産むのは2年に1回ぐらい。1回の出産で2~4頭。性成熟は約14か月から20か月。妊娠期間は60日ぐらい。子別れのような現象は見られない。
行動 なわばりは持たないので、条件の良い場所には多頭数生息できる。タヌキやハクビシンなど餌の競合する他種に対しては攻撃的で、追い出す。夜行性だが、昼間も活動する。 なわばりは持たないので、条件の良い場所には多頭数生息できる。他の動物にも攻撃性は薄く、繁殖場所が異なるタヌキとは共存してきた。夜行性で、日没から行動しはじめ、真夜中はいったん休憩所か巣で休憩し、その後また起き出して、日の出前まで行動する。冬季は肉食を好む。
凶暴性 成獣はかなり凶暴。飼育個体では雌の豹変ぶりが雄よりひどいらしい。飼育放棄された原因はほとんどこの凶暴性によるところが大きいと推察される。 凶暴性は個体差がある。檜原村で捕獲されたハクビシンはかなり凶暴だったが、青梅市で捕獲されたハクビシンは非常にシャイでおとなしかった。
寿命 飼育下では、15~16年。野生では7~8年と推定されている。 飼育下では20年を超える。野生でも、アライグマよりはかなり長いと推定されている。