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2014 秋号 Vol.89

年金の離婚分割制度

近年、中高齢者の離婚件数の増加に伴い、離婚後の男女間における年金受給額の格差が大きな問題となっていました。この格差を是正するため、離婚時の厚生年金の分割制度が導入されました。
分割の対象となる年金は、いわゆる報酬比例部分の年金である老齢厚生年金等に限定され、国民年金から支給される老齢基礎年金は分割の対象外です。
また、現在の離婚分割制度には平成19年4月から実施された「合意分割」と、平成20年4月から実施された「3号分割」の2種類があります。

1.「合意分割」について

(1)制度の概要

・分割の対象となる離婚
:平成19年4月以降の離婚が対象となり、それ以前の離婚には適用されません。
・分割されるもの
:婚姻期間中の双方の厚生年金の標準報酬額(年金記録に登録された給料)です。
・分割する方法
:標準報酬額の多い方から、少ない方に対し標準報酬額を分割する。
・分割の割合
:当事者の合意または裁判・調停等により決められた分割の割合。
・手続きの方法
:当事者の一方による分割請求。(当事者双方で出向くことも可)

(2)制度の注意点

  • ・分割を受けても、受給資格期間の計算には影響しない。(受給資格は本人だけの加入記録で判断される)
  • ・分割請求には当事者間の合意が必ず必要となる。(合意がないと請求できない)
  • ・分割を受けた場合、必ず年金の受給額が増えるとは限らない。(受給額が減る場合もあり得る)
  • ・分割の請求の期限は、離婚後2年以内。(調停等が長引いた時は特例がある)

(3)当事者への情報提供

  • ・離婚分割を請求する前に、当事者は必要な情報を請求できます。
  • ・情報提供の請求には、当事者の年金手帳と戸籍謄本が必要です。
  • ・離婚前なら役所からの情報は、請求した者だけに提供されます。

(4)まとめ

  • ・離婚分割請求の前に必ず年金事務所へ情報提供の請求をし、分割後の状況を確認しておくこと。
  • ・合意は書面ですること。(書面がない場合、年金事務所で当事者双方が書面を作成することが可能)
  • ・合意がまとまらなかった場合、裁判所で分割割合を決めてもらうこともできます。

2.「3号分割」について

(1)制度の概要

・分割の対象となる離婚
:平成20年5月以降の離婚が対象となります。
・分割されるもの
:平成20年4月以後の第3号被保険者期間中の相手方の厚生年金の標準報酬額です。
・分割する方法
:厚生年金の被保険者であった方から、第3号被保険者であった方に対して標準報酬額を分割する。
・分割の割合
:2分の1
・手続きの方法
:第3号被保険者であった方からの請求(合意は必要ない)

(2)制度の注意点

  • ・分割できる記録は、平成20年4月以降の厚生年金の記録に限定されます。
  • ・それ以前の記録も分割する場合には、「合意分割」制度を利用することになる。
  • ・離婚分割の請求が有った場合、分割される側の者はそれを拒否出来ず、自動的に分割されてしまう。