2020 夏号 Vol.112
営農レポート
土壌診断を活用し、適正施肥を行いましょう
健康な土づくりは農業生産の基本です。普及センターでは夏と冬の年2回、JA東京みどり管内で土壌診断を実施し、土づくりを支援しています(1戸あたり最大3点可能)。
土壌診断の結果を見ると、どのような施肥をすれば良いのかも判断できます。今回は適正な施肥のための土壌診断活用術についてご紹介します。
- ステップ1
- 土壌を採取しよう〈提出はお近くのJA各支店へ〉
以下の点に留意して、土壌を採取してください。
- 普通畑の土壌は、原則として5か所から採取する(図1)。
※樹園地では、数本の樹を選定し、樹冠の先端から約30㎝内側の土壌を数か所ずつ採取する。樹種によって深さは異なる(図2)。 - 表土を取り除き、深さ約15㎝までの土壌を移植ごてで採取する(図3)。
- 土の塊は砕いて良くほぐして混和し、新聞紙等の上に薄く広げ、日陰で風をあて乾かす。
- 2mm目の「ふるい」でふるう(ザルや寒冷紗等でも可)。
- 土壌採取用の封筒に必要事項を記入し、土壌を半分(約100g)程度入れる。
【必要事項:採取日、住所、氏名、圃場地番、ハウス・露地、作物名(前作・後作)、生育状況】
- ステップ2
- 処方箋を確認し、肥料成分等土壌の状態を把握しよう
提出いただいた土壌は普及センターで分析し、結果を「土壌診断処方箋」にとりまとめてお返しします。
土づくりや施肥の改善に役立つ情報ですので、参考にしてください。
【分析項目ごとの測定値・評価】
「測定値」欄には、土壌の状態を数値で示しています。
「評価」欄には、測定項目ごとの過不足を記号で示しています。大まかな目安として「過剰▲」「不足▼」の項目は積極的に改善が必要、「やや過剰△」「やや不足▽」は要注意です。
【改良対策】
より良い土づくりをする方法を書いています。
また、ECが高い場合には基肥から窒素を減らす等、施肥のポイントも書いています。
【レーダーチャート】
土壌のバランスを示しています。良好な土壌では、測定値のグラフが実線と点線の間で正六角形になります。
- ステップ3
- 作物に与える肥料成分の量を決めよう
次の栽培にどれだけの肥料を与えるか成分ごとに考え、施肥設計をしましょう。
東京都では、主要な農産物について「東京都農作物施肥基準」を作成しているので、施肥設計の参考にしてください。
表1 施肥基準の例・・・トマト促成(長期どり)黒ボク土
土壌診断処方箋に書かれた「ECが高いので窒素量を3/4にしてください」「リン酸が不足しているので熔リンを10a当り30kg施用してください」等の改良対策に従って、肥料成分を増減して調整してください。
表2 改良対策に従った施肥設計の例
- ステップ4
- 肥料の量を計算しよう
まず、ステップ3で作成した施肥設計と圃場面積から、①圃場に施用する肥料の成分量を計算します。次に②使用する主な肥料の成分量を調べ(肥料袋の「保証成分量」の欄を参照)、③施用量を計算します。④主な肥料で不足する分は、熔リンや塩化カリ等で補います。
表3 肥料の施用量の計算例(圃場面積4a)
①圃場に施用する肥料の成分量=施肥設計の量(kg/10a)÷10(a)×圃場面積(a)
③主な肥料の施用量=①の成分量(kg)÷②の保証成分量(%)×100
※例では窒素を基準に計算しましたが、リン酸や加里を基準に計算する場合もあります。
- もう1ステップ
- 肥料の量を計算しよう
堆肥等の有機物は土壌をふかふかにするだけでなく、肥料持ちを良くする効果や有用な微生物を増やす効果などもあり、健康な土づくりには欠かせません。しかし、鶏ふんなど肥料成分を多く含むものもあり、これらを考慮しないで施肥をすると土壌中の肥料成分のバランスが崩れる場合があるので注意が必要です。