2019 春号 Vol.107
税務・法律・人事・労務管理相談
生産緑地法の改正と農地の納税猶予制度に与える影響について
生産緑地法の改正の内容
- ・「特定生産緑地」制度の創設
- ・生産緑地の最低面積を500㎡から300㎡に緩和
- ・一団の農地とみなす範囲を、同一又は隣接街区とする運用緩和(個々の農地地積は各100㎡)
- ・生産緑地内に直売所、農家レストラン等が設置可能になりました。
平成4年に生産緑地法の改正があり、当時「農地の相続税納税猶予」制度の対象地が「生産緑地」となったこともあり、現行の「生産緑地」面積は、平成4年に指定されたものが70%を占めているとされております。他の「生産緑地」の指定時期は、平成3年以前に旧生産緑地法で指定された「生産緑地」と、平成5年以降に追加指定された「生産緑地」です。
平成4年に「生産緑地」の指定を受けた農地は、平成34年中に30年経過の「買取申出」が可能となり、随時「買取申出」手続きをすることにより「生産緑地」外とすることができます。
平成3年以前の旧生産緑地法での指定を受けた生産緑地は既に「買取申出」の期間制限がなく、ここでの「特定生産緑地」制度の対象となりません。また、追加指定された「生産緑地」は、指定後30年経過時に「特定生産緑地」制度の対象となります。
今回の生産緑地法の改正は、今後30年の期間満了日(申出基準日)を迎える「生産緑地」を対象として、(A)申請をして新たな「特定生産緑地」とするか、(B)申請をせずに現行の「生産緑地」とするかを選択するものです。
(A)「特定生産緑地」申請した場合の今後の扱い
- (イ)固定資産税の扱い・・・農地課税
- (ロ)買取申出までの期間・・・主たる従事者等の死亡等又は、指定後10年経過
- (ハ)「相続税農地の納税猶予」制度の継続・・・継続します。
- (ニ)「相続税農地の納税猶予」制度の新規適用・・・できます。
(B)前記(イ)の申請をせず、現行の「生産緑地」とした場合の扱い
- (イ)固定資産税の扱い・・・平成35年以後5年間で段階的に宅地並み課税
- (ロ)買取申出までの期間・・・随時
- (ハ)「相続税農地の納税猶予」制度の継続・・・継続します。
- (ニ)「相続税農地の納税猶予」制度の新規適用・・・できません。
従い、既に「相続税農地の納税猶予」制度の適用を受けている農地及び今後10年以上保存予定の農地については、必ず「特定生産緑地」の申請をしてください。申請にあたり、現行の「生産緑地」に抵当権等が設定されている場合は、抵当権者との調整が必要ですので早めに市と相談してください。なお、「農地の相続税納税猶予」制度の規定に従い国が設定した抵当権は市が抵当権者と調整します。
また、一筆の「生産緑地」の一部を「特定生産緑地」として申請する場合は、分筆を要求される可能性があります。分筆に日数を要しますので、この場合も早めに市と相談してください。
すでに「農地の相続税納税猶予」制度の適用を受けている農地につき「特定生産緑地」の申請をしない場合、「農地の相続税納税猶予」制度の継続は可能ですが、固定資産税が宅地並み課税となると共に、次の相続においては「農地の相続税納税猶予」制度の対象になりません。また、この農地を農業相続人の死亡前に転用等(売却処分)すると、猶予された相続税及び相続税の納期限から転用等までの期間の利子税を納付することになります。
さらに売却処分した場合は、これに加え譲渡所得税等の負担も発生します。相続開始日からの経過年数によっては、相続税、利子税及び譲渡税の合計額が譲渡価額を上回るケースもあり得ます。農業相続人の死亡前に転用等を予定する場合は、事前に必ず税務署又は税理士と相談してください。
平成3年以前の旧生産緑地法での指定を受けた生産緑地については、現行も、今後も随時買取申出可能で、かつ「農地の相続税納税猶予」制度の対象農地です。また、ここでの「特定生産緑地」申請も不要です。
この農地は東大和市に大変多く、同市内の生産緑地所有者は、種別(新法指定・旧法指定)は必ず都市計画課で確認してください。
その他の改正では、生産緑地の最小地積が300㎡になったことにより、道連れ解除の危惧がなくなり、小規模な農地が「農地の相続税納税猶予」制度の対象地として選択可能となりました。また、生産緑地内に直売所、農家レストラン等の設置が可能になりましたが、これら施設の敷地は「農地」と認めらないので「農地の相続税納税猶予」制度の対象となりませんので注意しましょう。