2018 夏号 Vol.104
税務・法律・人事・労務管理相談
医療費控除と節税
高齢者が、病院や診療所との付き合いが多くなるのは自然なことです。
医療費が多くかかった年にその医療費の負担を少しでも軽くするために医療費の一部を確定申告で戻してもらう制度が医療費控除です。
所得税確定申告に医療費控除を適用する納税者は、毎年のように増加しております。
医療費控除は、確定申告をしなければなりませんが、どのようなものが控除対象なのかを知ることが来年の確定申告に役立つことになるでしょう。
医療費控除の対象になるのは、主として医師による治療目的のものが認められます。
1.入院・通院
- ・病院・診療所に支払った診療費、治療費
- ・医師の判断による差額ベッド代金
- ・治療のためのマッサージ、はり、お灸
- ・治療のための松葉杖、義足の購入費用
- ・入院時に提供される食事代
- ・入院、通院のための交通費
- ・電車、バスでの移動が困難の場合のタクシー代
- ・医師が治療上必要と認めた近視矯正手術、メガネ、コンタクトレンズ代金
2.出産
- ・妊娠中の定期検診・出産費用
- ・助産師による分娩の介助料
- ・流産した場合の手術費、入院費と通院費用
- ・母体保護法による妊娠中絶した場合の手術費用
3.歯科治療
- ・虫歯の治療費用、金歯、銀歯と入れ歯の費用
- ・治療による歯列矯正
- ・インプラント治療
4.医薬品の購入
- ・医師の処方箋により薬局で購入した医薬品
- ・病気やケガの治療のために自ら薬局や店舗で購入した医薬品
医療費控除の対象にならないもの
1.入院・通院
- ・医師や看護師への謝礼
- ・美容整形の費用
- ・医師の指示によらない差額ベット代金
- ・インフルエンザ予防注射の費用
- ・健康診断や人間ドックの費用(病気の発見や治療の繋がる場合は除く)
- ・通院のための自家用車のガソリン代や病院駐車場料金
- ・メガネ、コンタクトレンズの費用
- ・入院時のパジャマや洗面用具
- ・会社や保険会社に提出する診断書代金
- ・通院のための宿泊費用(長距離の通院は想定していないため)
2.出産
- ・出産のため実家に帰る交通費
- ・母体保護法によらない妊娠中絶した場合の手術費用
3.歯科治療
- ・美容のための歯科矯正
- ・歯石除去のための費用
4.医薬品の購入
- ・疲労回復、健康増進、病気予防などのために購入した医薬品
医療費を補填する保険金
医療費控除では補填される次の保険金は差し引かなくてはなりません。
- ・健康保険から支給される出産一時金や配偶者出産育児一時金
- ・高額療養費など健康保険から支給されるもの
- ・生命保険会社や損害保険会社から支給される医療保険、入院給付金
有利な医療費控除のポイント
- 1.家族全員の医療費をまとめること
- 医療費控除は本人分だけではなく両親や子供を含む家族全員の分をまとめた医療費を対象にできます。
- 2.家族の中で1番所得の多い人が申告すること
- 所得税は、所得が高い人ほど税率が高くなるので所得の多い人が申告したほうが有利になります。
- 3.税務署に確定申告をすること
- 医療費控除は確定申告をしなければ還付を受けることができません。
- 4.領収書を整理すること
- 領収書など医療費の支払いを証明するものが必要ですから、常日頃からこまめに整理しておきましょう。少額の領収書でも年末に多額の医療費が発生した場合には役に立ちます。
- 5.医療費控除は5年前までさかのぼって申告することができます。