2018 春号 Vol.103
営農レポート
近年多発しているホウレンソウケナガコナダニの対策
ホウレンソウケナガコナダニ(以下ケナガコナダニ)は近年ホウレンソウを中心に全国的に被害が増加している害虫です。多発すると甚大な被害を与える上に、一度発生してしまうと根絶が難しい害虫ですので、予防が非常に重要となります。
形態・生態
土壌中に生息し、有機物や有機物に発生する糸状菌を餌とします。土壌表面から深さ5cmまでの層に多く生息し、体長は0.3~0.7mmと非常に小さく肉眼での確認が困難です。体色は光沢のある乳白色で後胴体部に長い毛が生えています(写真1)。
冷涼な気候を好み、20℃程度が発生適温です。平均気温20℃で卵から成虫にかかる期間は18日程度と短期間で成長します。
被害
ホウレンソウでは本葉2葉展開期頃から、ケナガコナダニが土壌中から移動、定着し、新芽部を加害します。加害を受けた葉は展開するにつれて小突起や針でついたような小孔を伴う奇形(写真2)となり、ひどい時は芯止まりとなります。また、ホウレンソウの他にコマツナ、キュウリ、カボチャ、トウモロコシ等でも被害が見られますが、ホウレンソウとは症状が異なる場合があります。例えばコマツナでは発芽後生育が停止し、やがて枯死します。
冷涼な気候を好むため、春と秋に多く被害が発生します。ハウス1棟が全滅する事例もあり、注意が必要な害虫です。
写真1 ホウレンソウケナガコナダニ
写真2 ホウレンソウ被害圃場の様子
発生する原因
有機物や有機物に発生する糸状菌を餌として増殖するため、有機質資材を積極的に活用した栽培で農作物への被害が多く見られます。稲わら、米ぬか、油粕等の未熟な有機物や未熟な堆肥の施用により発生が増加しますが、特に木材チップやもみ殻等の腐熟が遅い資材はケナガコナダニの発生を助長する大きな要因となっています。
また、前作の残渣が増殖源となるほか、被害株を圃場に放置すると発生を著しく助長します。
対策
(1)耕種的防除
- ・前作の残渣や間引き株は増殖源となるので、圃場外へ持ち出し処分する。
- ・土づくりのための有機質資材は適正量の施用に努める。
- ・被害が発生した場合、木材チップ、もみ殻等の混合堆肥、生の稲わらや有機質肥料の投入を中止する。
(2)薬剤防除(発生が見られた場合)
- ・播種前に登録のある土壌処理剤を施用する(バスアミド微粒剤やネマモール粒剤30等)。
※ネマモール粒剤30は製造中止となったため、今後入手できなくなる。 - ・生育期の薬剤散布を行う。土壌から株へ移動する前に行う。ホウレンソウであれば2葉期と4~6葉期の散布が効果的である(表1)。
ただし、土壌中などの薬液がかかりにくい場所にいるため、耕種的防除による予防が重要である。
作用機構分類コード | 薬剤名 | 備考 | |
---|---|---|---|
土壌処理剤 | 8B | クロルピクリン | |
8F | バスアミド微粒剤、ガスタード微粒剤 | ||
8A | ネマモール粒剤30 | ||
散布剤 | 1B | スミチオン乳剤 | |
6 | アファーム乳剤 | ||
13 | コテツフロアブル | ||
15 | カスケード乳剤 | 2葉期に使用が好ましい |
- ※作物ごとに登録薬剤を確認してください。
- ※ネマモール粒剤30は製造中止となったため、今後入手できなくなります。
ホウレンソウケナガコナダニは一度多発すると根絶が難しいため、日頃の土づくりや肥培管理等に注意し、発生を未然に防ぎましょう!
なお、気になる症状がありましたら、普及センターへご相談ください。