2017 春号 Vol.99
営農レポート
緑肥による土づくり
作物を健全に育て、安定した収穫を維持するためには、土づくりが必要です。一般的には堆肥の投入により土づくりを行いますが、ここでは緑肥による土づくりをご紹介します。緑肥とは、作物を収穫せずに土にすき込むことを言います。堆肥の投入に比べて、緑肥は一作を使ってしまうデメリットがありますが、労力が少なくて済み、堆肥にはない効果も期待できます。
緑肥作物の効果と選び方
緑肥にはさまざまな効果がありますが、使用する緑肥作物によって効果が異なってきます。以下に使用する緑肥作物と主な効果をまとめます。
- 土壌に多くの有機物を供給できるので、①土壌がフカフカになり保水性、排水性が良くなる、②肥料持ちが良くなる、③有機物をエサにさまざまな微生物が増え、微生物間のバランスが保たれるため、土壌病害が発生しにくくなる、等の効果があります。この効果はすべての緑肥作物に共通ですが、特に、豊富な生育量、根量が得られるギニアグラス、スーダングラス、エンバク、ソルゴーなどのイネ科緑肥作物が適しています。
- ソルゴーは上記の中で特に根量が豊富で、地中深くまで根が張るため、硬盤を壊す効果があります。これは堆肥にはない効果です。ただし、ソルゴーは茎が固くなる前(出穂前)にすき込まないと、すき込みにくく、さらに腐熟に多くの時間を要するため、注意が必要です。
- 緑肥作物の中には、有害線虫を減らす効果のあるものがあり、こちらも堆肥にはない効果です。緑肥作物の種類によって、効果のある線虫種が異なるので、対象とする線虫に応じて使用する緑肥作物を選びます(表1)。
植物名 | 科名 | 代表商品名 | 対象線虫 | ||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
サツマイモネコブ | ジャワネコブ | キタネコブ | アレナリアネコブ | キタネグサレ | ミナミネグサレ | ダイズシスト | |||
ギニアグラス | イネ | ソイルクリーン | ◎ | ◎ | ◎ | ○ | ○ | ○ | |
エンバク | イネ | ヘイオーツ | ◎ | ◎ | ○ | ||||
ソルゴー | イネ | つち太郎 | ◎ | ◎ | |||||
クロタラリア | マメ | ネマキング | ◎ | ◎ | ◎ | ◎ | ◎ | ○ | |
クリムソンクローバー | マメ | くれない | ◎ | ||||||
マリーゴールド | キク | アフリカントール | ○ | ○ | ◎ | ○ |
参考:雪印種苗株式会社HP
ギニアグラス(ソイルクリーン)の様子
※雪印種苗株式会社HPより
トラクターによるすき込みの様子
※雪印種苗株式会社HPより
緑肥作物の作付時期
緑肥作物の作付時期は、夏の高温を好むマメ科のクロタラリア、イネ科のギニアグラス、ソルゴー等を使った夏の作付と、エンバクやヘアリーベッチ等の冷涼な気候を好む緑肥作物を使った、春または秋の作付、または冬の作付が可能で、作付計画と土づくりの目的を考えて緑肥作物を選択します(表2)。
作物名 | 科名 | 代表商品名 | 播種期 | |||
---|---|---|---|---|---|---|
早春 | 春~夏 | 盆過ぎ | 越冬 | |||
エンバク | イネ | ヘイオーツ | ○ | ○ | ○ | |
スーダングラス | イネ | ねまへらそう | ○ | |||
ギニアグラス | イネ | ソイルクリーン | ○ | |||
ソルゴー | イネ | グリーンソルゴー | ○ | |||
ヘアリーベッチ | マメ | まめ助 | ○ | ○ | ○ | |
クロタラリア | マメ | ネマキング | ○ | |||
クリムソンクローバー | マメ | くれない | ○ | ○ | ||
マリーゴールド | キク | アフリカントール | ○ |
参考:現代農業2012.10 雪印種苗株式会社作成資料
緑肥作物のすき込み時の流れ
緑肥作物がすき込み適期になったら、ロータリですき込みます。
土壌中で微生物による分解が始まるため、腐熟期間を20~30日間設けます。すき込み後すぐに後作を作付すると、発芽・生育障害を起こす可能性があります。
イネ科緑肥作物の場合、硫安や石灰窒素を40kg/10a程度施用すると分解を促進できます。ただし、残肥がある場合は施用の必要はありません。
腐熟期間中に2~3回ロータリ耕を行い、土壌中に酸素を供給し、微生物による腐熟を促進します。