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2015 春号 Vol.91

税務・法律・人事・労務管理相談

相続…大切なものは自分で守りましょう。

 皆様ご存知の通り、本年度より相続税の大増税時代到来となりました。特に焦点として挙げられるのは、基礎控除4割減です。相続人子2人ですと7000万円から4200万円になりました。東京近郊地で路線価60万円として、自宅80坪のみで基礎控除超えで4800万円になってしまいます。親子同居ならば土地評価8割引きで960万円となり、他に預貯金など3200万円までなら課税はナシですが、痛いのは、近年の核家族化による親子別居老親の相続は、8割引き不可です。
 さて、この様な相続税増税を背景に相続ビジネスが以前に増して一気に過熱しております。一昔前ですと『相続税を減らすためには借金が必要です。アパート建築で借金を増やしましょう。借金を増やすことが目的だから高級な建物を…、』こんな提案をされ、その通りにやったら借金が返せなくなり、競売を迫られて、という話をよく聞きました。
 こんなひどいプランを言われるがままに実行したのですか?借金を増やすのが目的だなんておかしいと思いませんでしたか?と尋ねると、「親切で親身になってくれる営業マンだったもので、全く心配していませんでした。」という有様。営業マンも悪いかもしれませんが、無防備だったご自身が一番悪いということでしょう。
 近年では、この様な借金を増やすだけの手法では、引っかからなくなってきたのですが、『あなたぐらいの方は、相続税を心配しないといけませんね…』こんな心地よい営業トークに乗せられて、「相続対策をしました!」という方に、どのくらい相続税は減ったんですか?と尋ねると「そこまではよく知らないけど…」という始末。本当に相続税はかかっていたのか、相続税の試算も、対策効果の検討もせずに相続対策をやってしまっている人がいます。
 共通して多くの方の経済観念は不思議なところがあり、10万円までのお金には細かくて、支払いに厳しいのですが、億円を超えるお金にはおおらかで、あまり細かいことを言いません。専門家への相談料数万円をケチって、業者などが主催する無料相談会に行きます。タダのものは有効に使おうというものです。そして、タダで相談して、気がつくと何億円の建物を発注してしまっています。
 大きな財産について悩んだら、10万円までの小さなお金にはおおらかに、億円のお金には細かく厳しく、を間違えないようにしましょう。
 ある方は、相続税500万円と聞き、借金5000万円で賃貸住宅を建築。土地は自身の敷地だから、土地代はゼロ。当初採算はいいとしても後は大丈夫なのか?何十年間の借上保証?それは賃料収益の保証なのでしょうか。あくまでも借上げの保証だと思われます。
 相続税対策は、財産評価を下げることではなく、価値を保ちつつ相続税評価を下げることです。価値と評価の違いが分からず、売却見込み財産の価値を下げてしまうことのないようにしなければなりません。
 相続税の節税が「目的」で行う投資や建設は「手段」です。投資や建設を「目的」とする側は、相続税の節税は「手段」です。
 大切なものは、自分で守るしかありません。他人任せのツケは必ず自分に回ってきます。自分の御家庭に合った相続対策を、それは分割であったり、相続税資金の確保であったり、戦略的な贈与を行っていく、保険の活用で資金確保をしていく、様々な手法をオリジナリティーに考えていかなくてはいけないでしょう。