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2015 新春号 Vol.90

税務・法律・人事・労務管理相談

相続への備え

今年からは、相続税の課税が大幅に強化されますので誰にも訪れる相続の対策と心構えがより重要になります。世代交代である相続は家族にとって大きな節目となります。家族の協力で乗り切りましょう。
相続税法の主な改正点は次の通りです。

1.基礎控除額が昨年の6割に縮小されます。

2.相続税の最高税率が55%に上がります。

3.未成年者控除、障害者控除枠が拡大されて相続税から控除される税額が増えるので相続税額が減少します。

4.自宅や貸家に使用する宅地の評価額から差し引かれる金額が増加するので相続財産額が減少します。
 (小規模宅地等の特例)

5.相続税精算課税方式の制度が利用しやすくなります。

この制度の利用者は、贈与する人の年齢が65歳から60歳以上に引き下げられたうえ、贈与を受ける人に相続人ほか孫も含められるように改正されました。

6.贈与税の特例財産制度の制定

通常の贈与税の税率とは別に直系の祖父母や父母からの贈与により財産を取得した20歳以上の子や孫は一般税率よりも軽減された特例税率を適用できます。贈与の大部分が血族間で行われている現状では、この制度は大いに利用されることになるでしょう。

相続税に対する対策は、主に節税策が話題の中心になっていますが、実際の相続への対策は次のように分類されます。

1.遺産分割対策

生前に相続開始後の財産の行方を自分で決めるには「遺言書」の作成が必要となります。そして、毎年の贈与税110万円基礎控除を利用して相続財産を減少させることも重要です。
生前に財産を相続人に贈与することにより相続財産の分散を図りトータル的には財産の移転にかかる税額を減らすことができます。また、贈与を受けた人の笑顔と感謝の言葉がもらえます。
相続税の課税強化の緩和策として相続税精算課税方式の制度が利用しやすくなりました。
高齢者から若年者への世代間の財産移転を推進して消費を刺激し日本経済を活性化させることが政府の方針です。

2.納付税額対策

相続税は、現金納付が原則です。物納は例外的な税金の納付方法ですから来たるべき時に備えて現金の確保を心掛ける必要があります。
そのためには、不動産資産を換金が容易な金融資産に変えておくことも重要なことです。一時払いの生命共済金等を活用して現金を確保する方法もあります。
換金の難しい不動産には、物納対策として借地人や借家人との契約書の整備や土地測量の実施等準備をしておくことが大事です。相続人の方は、借地人や借家人との話し合いができるような雰囲気を作り、不良な借家人等の整理も必要になります。

3.節税対策

子供と同居している人にとっては、相続人ではないが毎日お世話になっている相続人の嫁や孫、甥や姪などの方を養子として相続人に加えることも恩返しとなる上に節税策ともなります。実子がいない場合は、相続税法上は2人まで養子が認められます。
遊休地にマンションや倉庫を建て賃貸物件として利用することも節税策になります。借入金に依存する建設では、相続税は節税できますが、長年にわたる借入金の返済と空室のリスクを負担することになります。
毎年の贈与を利用して生前に財産の移転を図ることが、有利な相続税の節税策であると思いますので、相続人と相談の上実行してください。