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2014 春号 Vol.87

税務・法律・人事・労務管理相談

消費税率8%にあたり注意したいこと

平成26年4月1日より消費税率が5%から8%に引き上げられました。ここでは東京みどり農協の組合員様に身近な不動産の貸付事業と消費税について改めて確認したいと思います。

(1)不動産の貸付による賃料のうち、消費税の課税されない取引(非課税)

土地の貸付、住宅の貸付による賃料については、消費税が課税されません。具体的には次によります。
①土地そのものを賃貸し、受けとる地代は非課税ですが、地主が土地に砂利敷き、アスファルト等の施設を設置し、駐車場等として貸付ける場合は、施設の貸付となり非課税となりません。
 なお、電柱敷地料、借地権の更新料、名義書換料は非課税です。
②居住用賃貸住宅等の家賃、礼金、更新料、共益費は非課税ですが、退去にあたり受ける現状回復費用は非課税となりません。
 併用住宅の家賃は課税非課税が混同していますので、家賃を住宅用部分と、住宅用以外に合理的に区分してください。

(2)旧税率(5%)と新税率(8%)の区分

個人事業者の不動産の賃貸料の消費税率は、賃貸契約で定めた賃料の支払い日により判定し、その日が平成26年3月31日以前であれば5%、その後であれば8%と扱われるものと思われます。(法人事業者と取り扱いが異なります)
①当月分の賃料の支払期日を前月末日までとしている賃貸借契約で、平成26年4月分の賃料を平成26年3月中に受領する契約の場合
 原則として、5%の税率が適用されます。
②当月分の賃料の支払期日を翌月末日までとしている賃貸借契約で、平成26年3月分の賃料を平成26年4月以後に受領する契約の場合
 原則として、8%の税率が適用されます。
③更新料については、契約又は慣習により更新料の支払日が定められ、その日が平成26年3月31日以前であれば5%、その後であれば8%の税率が適用されるものと思われます。支払い日が定められてない場合には、その手続きの日により適用税率を判定するものと思われます。

(3)経過措置の取扱い

個人事業者の場合、平成26年4月1日以後に支払日が定められている家賃等は原則8%の新税率が適用となりますが、平成25年9月30日までに契約し、平成26年3月末日までに貸付を開始した場合には、次の要件のうち①、②、③及び④(又は⑤)を満たせば平成26年4月1日以後も5%の税率が適用されます。
① 平成26年3月31日までに引渡し、貸付を開始すること
② 平成26年4月1日以降も引続き貸付を行っていること
③ その契約において貸付期間と対価の額が定められていること
④ 事業者が対価の額の変更を求めることができないこと
⑤ 契約期間中にいつでも解約の申し入れをすることができる旨の定めがないこと

(4)簡易課税制度

消費税額」を控除し算定しますが、これがなかなか厄介です。このため、より簡単に税額計算ができる方法として、前々年の課税売上高が五千万円以下の事業者については、簡易課税制度が設けられています。
 一般に、不動産の貸付事業では、建物等を建築する年を除き、簡易課税制度の適用を受けると納付税額の計算が簡易なだけでなく、納付税額も軽減され大変有利になります。
 消費税率が8%になると消費税の負担はより大きくなりますので、この選択が可能な課税事業者には簡易課税制度をおすすめします。ただし、建物等の建築予定のある方は専門家相談なされるとよいでしょう。
①簡易課税制度の適用を受けるための手続き
 個人事業者の場合「消費税簡易課税制度選択届出書」を、適用を受けようとする年の前年末日までに、納税地の所轄税務署長に提出しなければなりません。
②相続により事業を承継した相続人の簡易課税制度の適用
 相続により被相続人の事業を引継ぎ、消費税の課税事業者となったため、その後簡易課税制度の適用を受けようとする場合は、適用関係が複雑になりますので、早めに専門家に相談されるとよいでしょう。