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2014 春号 Vol.87

営農レポート

家畜糞由来有機質肥料の使い方

家畜糞由来有機質肥料の特徴

(1)発酵牛糞

おがくず等で水分調整されたものが多い(敷料がたいていおがくずやチップである)ので、肥料効果よりは、土壌改良効果を目的に使います。茶色から褐色をしたものが良く、黒いものはあまり良くありません(嫌気発酵しているか、熟度が進み過ぎています)。ただし、白土を副資材に使っているものは白っぽくなっている場合があります。なんとなく白いぐらいはよいのですが、すごく白っぽいのは、白土※の入れ過ぎで、比重が重すぎて発酵していない恐れがあります。天候に恵まれすぎると発酵終了前に乾燥しすぎて乾燥牛糞になっていることがあります。顆粒状のものは乾燥していてもほぼ発酵終了していますが、ダマが大きく、ダマの形が不定形でよく乾燥しているものは、加水して発熱しないか確認します。発熱する場合は再度発酵させてから使用するか、生糞に準じた使い方(入れてからしばらく播種や定植をしないか、溝施用または土の上に置いてすき込まない)をします。
※白土:食用油精製に使用された後の白い粘土で、油で熱量が高いため牛糞の発酵促進資材に使われる。

(2)発酵豚糞

鶏と牛の中間的性質のたい肥です。肥効もよく、土壌改良効果もあり、理想的です。しかし、重金属である銅と亜鉛を大量に含むという大きな欠点を持っています。銅も亜鉛も植物に必要なもので、現在では人間の不足養分となっていますが、水に流されることが無いため、農地に集積します。大量に集積してしまうと、他の養分吸収などに悪影響をもたらします。銅および亜鉛の農地集積を防ぐために大量には施用できません。そのため銅と亜鉛が少ない豚糞たい肥は、きわめて利用価値が高いたい肥です。これも、天候に恵まれすぎると、乾燥豚糞になっていることがあるので、牛糞たい肥と同様の注意が必要です。

(3)乾燥鶏糞

水分を吸うと、生鶏糞にもどります。落ち葉などをたい肥化する原料にするには、水分調整にもなるのでちょうど良い資材です。そのまま畑に使う時は、窒素は90%、その他の成分は全量が効くと考えて、化学肥料は減らします。また、入れてすぐに播種や定植をしてはいけません。しばらく臭いが出ることを覚悟する必要があります。

(4)発酵鶏糞

鶏糞を発酵させてしまうのは、実はもったいないのですが、このまま畑に入れても臭いや害はほとんどありません。もし散布後に強烈な臭いがしたら、製造中に好天等で乾きすぎて発酵が止まってしまい、乾燥鶏糞になってしまったものです。乾燥鶏糞と同じく、窒素は90%、その他の肥料成分は全量利用可能と考えて化学肥料を減らします。土壌改良効果はわずかしかありません。
ブロイラー由来のもののように、木質(おがくず等)が入っているものは、土壌改良効果も期待できます。ただし、この場合は、肥料成分は木質に吸着された状態で、全量すぐに植物が使える状態ではないので、C/N比を基準に肥料効果を換算して施肥設計します。C/N比が25を超える場合は、鶏糞由来でも、肥料成分にはカウントしません。

特殊肥料の表示等

有機質肥料は法令的には「特殊肥料」として扱われます。肥料取締法が変わったので、特殊肥料には、次の表示義務があります。表示がない場合は購入先に請求してください。
1.肥料の種類 ※1
2.肥料の名称(商品名)
3.製造届け出を受理した都道府県名と製造届け出番号
4.製造者の氏名・住所
5.正味重量
6.製造した年月
7.成分表示(現物表示はそのまま、乾物表示は乾物表示と明示し水分を表記)
  窒素全量、りん酸全量、加里全量、水分含量(乾物表示のみ)、C/N比 ※2
  ※3 その他、石灰、銅、亜鉛などについて、基準値を超えている場合は必ず表示します。
8.原材料 使用量が多い順に表示します

※1 特殊肥料の表示上の種類
発酵処理してあるものは、「たい肥」と表示され、乾かしただけのものは原材料の種別が書かれます。例えば、乾燥させた鶏糞の種類は「家畜家禽の排せつ物」と表記されます。
※2 C/N比 
炭素窒素比、炭素率とも呼ばれます。文字通り含まれる炭素と窒素の比率のことです。施肥設計でたい肥から供給される肥料成分の量の推定に利用します。家畜糞たい肥の場合は腐熟度判定にも利用します。
※3 基準値:現物当たりの数値で
銅(豚のみ300mg/kgを超えるもの)、亜鉛(豚・鶏のみ900mg/kgを超えるもの)、石灰(15%を超えるもの)

C/N比と肥料設計

1.30を超えるものは窒素飢餓の危険性が高いため販売できません。(もし売っていたら違反です。)
2.25~30のものは、当分肥料成分は供給されないので、肥料の量は化学肥料だけで計算します。特に30に近いものは、たい肥が化学肥料を吸着してしまい、肥効が悪くなることがあるので多めの施肥が必要です。
3.11~24は、表示の半分程度が肥料として使えるものとして、化学肥料を減らします。
 (正しくは下表のように換算します。)
4.10以下のものは、表示成分の窒素は9割、他は10割で肥料としてカウントし、化学肥料を減らします。
5.7以下のものは、たい肥としての価値はなく(分解が進んでも腐植にならない)、窒素過多なので、化学肥料と同じものとして使います。しかし、有機質肥料としてカウントされます。つまり、東京都エコ農産物認証などでは、鶏糞由来で安価なものは利用価値が高い有機質肥料です。

C/N比 24 23 22 21 20 19 18 17 16 15 14 13 12 11
換算値% 10.0 15.4 20.8 26.2 31.5 36.9 42.3 47.7 53.1 58.5 63.8 69.2 74.6 80.0