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2013 秋号 Vol.85

営農レポート

低温期に向けて活用したい資材とその特徴

これからの寒さに向かって、農産物の秀品率を高めるために活用する場面の多い不織布やトンネル資材の特徴について紹介します。

不織布を用いた寒さ対策

野菜栽培に利用する不織布には、長繊維不織布や割繊維不織布があります。簡易な方法で、外気よりも1~2℃ 高く保ち、寒風による葉傷みを少なくするというお手軽な資材です。 主な使用方法は、資材を直接、作物の上に「じかがけ」する方法とトンネル用の支柱を使い作物と資材の間に空間を作る「うきがけ」で使用する方法があります。「じかがけ」は簡単な方法ですが、強風時には作物と資材が擦れて茎葉が傷むという難点があります。一方、「うきがけ」は支柱を準備する必要がありますが、保温性は「じかがけ」より高く、作物と資材が直に触れないため葉傷みも少なく、秀品率が高まるという特徴があります。

長繊維不織布(ちょうせんいふしょくふ)

パオパオ、パスライトなどの商品名で売られているものです。強度や耐久性がやや低く使い回しがきかないというデメリットはありますが、比較的安価で、なおかつ軽いために扱いやすい資材です(写真1、表1)。厳寒期では長繊維不織布のみでの使用は難しいですが、秋~晩秋、早春~春の時期の葉菜類等の栽培に威力を発揮して広く活用されており、初期生育の促進や生育後半の凍霜害防止等にも効果が期待できます。

写真1:パオパオによるべたがけ被覆

パオパオによるべたがけ被覆

割繊維不織布(わりせんいふしょくふ)

ベタロン、ワリフなどの商品名で売られているものです。やや高価な資材となりますが、耐久性は高く概ね5年程度の利用が可能な資材です。PVA(ポリビニルアルコール)を素材とした‘ベタロン’は、熱線(赤外線)を逃しにくく、夜間の保温効果にも優れています。さらには、吸湿性があり、べたがけ内の湿度上昇を抑制するので、長繊維不織布で問題になりやすい資材内結露を軽減する利点もあります。最近では、防寒と防鳥を兼ね、キャベツの品薄時期である2,3月どりに利用している事例が増えています(写真2)。

写真2:ベタロンによるべたがけ被覆

ベタロンによるべたがけ被覆

表1 パオパオとベタロンの特性比較

  パオパオ ベタロン
保温性
防霜効果
通気性
昇温効果(昼間)
防虫効果
強度
耐用年数 1~2 5~7
資材内の結露 無~極小
参考価格(円/㎡) 44 199

ビニールを用いたトンネル栽培

様々な素材の資材が販売されていますが、その素材により保温効果は異なり、農ビが最も高く、農PO、酢ビ、農ポリの順に保温効果が下がります。 夜間の保温効果は、ビニール1重被覆では1~2℃ですが、2重トンネルにすると4~5℃の保温効果が期待できます。そのため、作る時期や品目により被覆方法を変える必要があります。  また、ビニールには換気孔のあるものとないものがありますが、換気孔のないものを用いる場合は、冬季の晴天によりトンネル内が思わぬ高温となり、うっかりしていると高温障害にみまわれることがあるので、栽培期間中の天候や作物の様子には気を配り、必要に応じて、適宜、換気を行うことが大切です。  一方、換気孔のある被覆資材は、換気作業を省力化することができます(写真3)。厳寒期(12、1、2月)のホウレンソウ栽培には保温性の高いユーラックカンキ2号を、春先には3、4号を用いると良いでしょう。

冬季は農産物が品薄となるため、高値が期待できる時期となります。これまで、冬季栽培をしてこなかった方は被覆資材を上手く活用して品薄対策に挑戦してはいかがでしょうか。

写真3:ユーラック4号によるトンネル被覆

ベタロンによるべたがけ被覆