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2017 夏号 Vol.100

営農レポート

ハウスの夏期高温対策

夏の施設では、人にとっても作物にとっても暑さとの戦いとなります。夏期の高温は身体にとって大きな負担となることに加え、作物の葉焼け等の生育障害を引き起こします。夏の施設栽培では、暑さを少しでも緩和することが必要です。
今回は施設での夏の高温対策について紹介します。

「ハウスの高温対策の基本 換気」
換気では、以下のような注意点に気を付けることで、施設外の温度と同じ程度まで下げられます。

営農画像01
妻窓

  1. 連棟より単棟のほうが、また天窓や妻窓などの換気窓が高い位置で大きいほど効率が良いです。
  2. ハウスの軒高が高いほど昼間の換気効率が良いです。
  3. 東京の夏は南風が吹くため、ハウスの向きは南北の方が換気効率が良いです。
  4. 側窓の開口幅を100㎝から150㎝にするだけでも2~3℃温度がさがります。

営農画像04

これからハウスを建てる場合は、単棟で軒高を高くし、南北向きにハウスを建てます。側窓はできるだけ幅広に開くようにし、妻面にはできるだけ高い位置に妻窓を取り付けます。パイプハウスは、ハウス上部に熱がたまりやすいため、天窓や妻窓のように高い位置で換気できる窓があると良いです。
すでに建っているハウスの高温対策としては、側窓をできるかぎり開けるほか、循環扇をつけて温度ムラをなくす、散水による降温、遮光資材を使用する等の方法があります。換気に加え、散水や遮光による対策をとることで、外気温よりも低くハウス内温度を下げることが可能です。
換気による対策が基本となりますが、より温度を下げるための方法として、散水や遮光について紹介します。

散水による降温

株元散水と頭上細霧散水に分けられ、冷たい地下水を利用すればさらに降温効果が高まります。ともにチューブの目詰まりや病害を防止するために良質な水を用います。

【株元散水】
水圧が変化しても圃場全体を均一に散水できるチューブを選ぶと良いです。灌水チューブを用い、作物に水がかかると葉焼けを起こすので、通路等の作物に水がかからないところに散水します。散水時間帯は朝から昼までで、気温の高い日中に盛んに蒸散させるようにします。灌水による降温効果は2~3℃ありますが、2時間程度で元の温度にもどります。
【頭上細霧散水】
専用の器材を使用し、霧状の細かい水滴を散水します。頭上細霧散水では、散水後1時間程度およそ3~6℃温度が下がります。細霧ではない水を頭上灌水すると、葉に水滴がつき葉焼けの原因となります。

遮光による対策

天井フィルムに塗布する遮光剤と、天井フィルムの上または内側に展張する遮光シートがあります。

【遮光剤】
遮光剤として酸化チタン(塗布後2~3年で落ちる)と炭酸カルシウム(塗布後2~4ヶ月で落ちる)のものがあります。遮光率30~40%のもので温度が2~3℃下がります。
【遮光シート】
遮光シートがない場合に比べて、日中のハウス内気温をおよそ5℃下げることができます。ハウスの外側に展張したほうが内張りに比べ、ハウス内の温度は下がります。

遮光率が高すぎると、茎葉の緑色が薄くなるなど、光合成の低下につながります。遮光率が30~40%のものを使用することをおすすめします。

表 遮光資材(遮光率50%)をハウス外部被覆したときの昇温抑制効果

  遮光なし(℃) 遮光資材で遮光(℃) 温度差(℃)
9日間(8/7~8/15)の最高温度の平均 43.0 37.5 5.5

(普及センター調べ)

営農画像02
「ふあふあエース50」の外張り
営農画像03
「メガクール」の外張り

ハウスの夏期高温対策としては、換気を基本とし、遮光と散水を組み合わせます。普及センターの取り組み事例では、換気・遮光・散水の組み合わせで約5℃昇温抑制しました。近年、換気だけの対策では作物の生理障害を防ぎきれない事例を見かけます。複合的な高温対策を講じることで、農産物の安定生産を実現しましょう。